三重県の「三重交通G スポーツの杜 鈴鹿」では12月21日、22日にそれぞれリーグワン開幕戦、大学ラグビー選手権の準々決勝という注目カードがあった。
近鉄の最寄り駅からバスで20分というアクセスの悪さがファンの足を遠のかせているが、初日のリーグワンの観衆約2800人を大幅に上回ったのが、翌日の大学ラグビーだった。関西リーグ1位の天理大に関東の明治大が挑むという好カードゆえ、気温6度という寒さにもかかわらず、4400人を超える観衆が狭いスタンドと芝生席を埋め尽くした。
試合は接戦の末に、明治大が24-21で勝利。1月2日に国立競技場で行われる準決勝第1試合で、選手権4連覇中の最強軍団・帝京大と激突することになった。
大学ラグビー界で人気No.1の明治大が勝利した影響は「いろいろな意味で小さくない」とスポーツライターが語る。
「1000人、2000人がやっとの地方会場での集客力から考えると、鈴鹿のあの不便な会場にあれだけの観衆を集められたのは、やはり明大人気によるところが大きい。勝利後、まだ1万枚程度しか売れていなかった1月2日の国立競技場のチケットが、にわかに動き始めましたからね。2日は第2試合で早稲田大が京都産業大と戦いますが、早明が揃って正月決戦に出場するのは4年ぶり。昨年は国立がガラガラに見えた約2万人の観衆を上回ることは間違いない。主催者はホッとしていることでしょう」
2日の国立競技場は3層スタンドを開放せず、1層、2層だけを使用。たとえチケット完売でも4万人弱という規模だが「問題になるのはその後です」と、前出のスポーツライターは懸念するのだ。
「1月13日の決勝戦は、例年の国立競技場の使用を断念して、秩父宮ラグビー場で行われます。秩父宮は立見席を入れても2万4000人。準々決勝前に募集された抽選予約で、指定席の約1万5000枚が完売してしまいました。残りはサイドの自由席か立見席のみ。しかも準々決勝で明治大が勝ったことで、万が一、決勝戦が『早明戦』になったらどうするんだ、という声が出ています」
下馬評では早稲田大と帝京大の決勝戦となっているが「決勝で早明戦を見たい」というラグビーファンは多い。
「12月1日の対抗戦における恒例の早明戦は、4万人以上の観衆を集めました。2019年の選手権決勝はこの早明が激突し、ワールドカップ直後のラグビー人気があったとはいえ、国立競技場に5万7000人以上が陣取った。今回の決勝がもし早明戦になった場合、チケットの高額転売を懸念する声が出ています。すでに完売した指定席は3倍の値段で取り引きされていますが、それがヒートアップするのは確実」(前出・スポーツライター)
一方で3回戦、準々決勝を圧勝して調子をグングンと上げてきた京産大が早稲田大を破る可能性は、明治大が帝京大を破る可能性より高いと言われる。
「もしも決勝が『京産大VS帝京大』になった場合、早明戦とは逆に、早明ファンのチケット投げ売りが起きる。秩父宮ラグビー場が、決勝戦とは思えないほどの寂しい光景になるのではないか。そんな心配がよぎります」(前出・スポーツライター)
早稲田大が無敗の快進撃を続けていることで、大学ラグビーは久々に熱気を帯びているが、早明に集中する「歪んだ人気」が再び露呈したともいえる。
早大が勝っても負けても、明大が勝っても負けても、その先には地獄が待っている。ファンや関係者は複雑な気持ちを抱えながら、正月決戦を迎えることになりそうだ。
(高木莉子)