今年で103回目を迎えた、高校サッカー選手権大会。天皇杯決勝の元日開催がなくなったこともあり、サッカーファンにとってお正月の楽しみは高校サッカー選手権だけになった。
ただ、今年も全体的に小粒で、大会最多得点となる10ゴール決めた大迫勇也(鹿児島城西、現・ヴィッセル神戸)や、1年生時から3年連続で出場し、史上初となる2大会連続得点王に輝き、通算17ゴールの記録を持つ平山相太(国見、現・仙台大学サッカー部監督)のような、いわゆる「怪物」が出てこなくなった。
そんな中でも、今大会でレベルの違いを見せつけた選手がいる。日章学園の高岡伶颯だ。
2回戦で敗退したものの、2試合でシュート16本を打ち、4ゴール2アシスト。特に1回戦の西目高校戦では、前半だけでハットトリックを決めた。もう少し、彼のプレーを選手権で見たかった。
卒業後はプレミアリーグのサウザンプトン加入が内定しているが、決してエリートではなかった。小学校、中学校で全国大会に出場したわけではない。若年層の代表にも縁がなかった。初めて代表に選出されたのは2023年、U-17日本代表のアルジェリア遠征だった。その後もU-17W杯アジア最終予選を兼ねたU-17アジア杯のメンバーに選ばれたが、ベンチスタートが多く、これといった活躍はしていない。
ところがその年の11月、インドネシアで開催されたU-17W杯のグループリーグ、3試合全てで後半からの途中出場にもかかわらず4ゴールを決める活躍で、一気に注目の的となった。
サウザンプトン移籍といっても、いきなりトップチームでプレーできるわけではない。プレミアU-21リザーブリーグからスタートする。身長168センチと小柄ながら、プレーを見ていると、何かをやってくれる、そんな期待を持たせてくれる選手だ。
小粒な選手が多い高校生の中で、選手権には出場できなかったが、高岡がずっと背中を追いかけてきた天才がいる。神村学園の名和田我空だ。
宮崎県出身で、小学校時代の宮崎選抜で高岡が「こんな選手がいるのか」とビックリしたという。中学は名門の神村学園に入学。3年の時に全国大会で10ゴールを決めて得点王に輝き、初の日本一に導く。
高校は神村学園高等部に進学。U-15日本代表から各世代で代表に選ばれており、高岡とともに出場したU-17アジア杯では5ゴールを決め、得点王とMVPを獲得した。昨季の高校サッカー選手権でも2年生ながら、3試合連続ゴールで優秀選手に選ばれた。
3年生となった昨夏のインターハイでも決勝に進出し、9ゴールで得点王に輝いている。今年の高校サッカー選手権の鹿児島予選では決勝で敗れたものの、5試合で18ゴール。高校サッカー界では群を抜く決定力だ。
身長は172センチと、決して大きくはない。ポジションはトップ下やシャドーの2列目だが、点を取るこだわりが強い。シュートにうまさだけでなく、足元の技術もあり、セットプレーからもゴールを狙える。
卒業後はJ1のガンバ大阪に入団。1年目から二桁ゴールを狙うと宣言した。宮崎が生んだ2人のストライカー。卒業後は、海外と国内と別々の道に進む。これからどんな進化を見せるのか、注目してほしい逸材だ。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。