1月9日の成人の日、5万868人もの大観衆の前で全国高校サッカー選手権の優勝旗を岡山県勢で初めて手にしたのは、伏兵の岡山学芸館高校だった。1回戦から、優勝候補の実力上位校を次々と撃破。専門家のほぼ全員が優勝候補の隅っこにも挙げなかった高校の戴冠に、世間も驚いた。スポーツライターが振り返る。
「決勝戦も、フィジカルで有利な東山高校(京都)を相手に、セカンドボール獲得に苦労しながら、数少ないチャンスを見事に決め続けて3得点。1回戦からの全6試合で先制点を許さなかった戦いぶりは見事でした。Jリーグ内定者ゼロ、つまりスター選手不在の高校ですが、中国地区のプリンスリーグでは無敗でしたし、高校サッカーマニアからは注目されていました。でも優勝までは…というのが大方の予想だった。それがあれよあれよの快進撃。試合前や試合後の礼儀正しさも爽やかで、評判が良かったと思います」
そんな岡山学芸館が大番狂わせを果たした大会で、物議を醸したのは、元サッカー日本代表の本田圭佑だった。1月7日に受けた取材で、
「個で見ると、なかなかいい選手がいる。ただ偉そうなことを言わせてもらうと、戦術面はちょっとひどいなと思う部分は多かった。これを話し始めるとライセンス問題、指導者の問題に行き着く」
と苦言を呈したからだ。
先のW杯の解説でもズバズバと斬り込む姿勢が大いに話題になった本田だが、これに反旗を翻したのが、岡山学芸館の平清孝ゼネラルアドバイザーだった。本田の意見を尊重して「ディカッションしたい」と言いつつ、本田の影響力に憮然。いわく、
「彼がぽっと言っちゃうと、高校サッカー、指導者を全否定しているようなね。ちょっとあれは怖い。『なんだ、俺たち一生懸命やっているのに』と思っちゃうかもしれない」
国立競技場で決勝戦を楽しんだファンは軒並み、平氏に同調したようである。前出のスポーツライターは、
「本田は日本サッカーの技術向上と発展のために、キツめの発言をしたと思います。でも、高校サッカーはあくまで、部活動の集大成。教育の一環なんだから、戦術以上に礼儀なども重要です。プロ目線の意見で高校サッカーを否定するのは出しゃばりすぎ、という声があるんですね。何でもかんでも上から言わないでほしい、というわけです」
同じ高校スポーツでで、近年導入された高校球児の球数制限も「プロ志向ありき」と批判する人は多い。確かにその競技を職業にする生徒は、ほんのひと握り。ほとんどが高校3年間の部活動で、完全燃焼を目指している。
タダでは引っ込まない本田の切り返しはあるか──。
(飯野さつき)