良くも悪くも、上下関係には無頓着な新天地。広島からオリックスに移籍した九里亜蓮には、そんな状況を見て大きな戸惑いがあったという。
春のキャンプではどこか生ぬるい雰囲気に、思わず「先輩や目上の人にはイヤホンとサングラスを外して挨拶しよう。ちゃんとやっていこうぜ!」と、張本勲ばりの「喝!」を入れている。
事実、オリックス選手同士の「馴れ合い」には、一部の選手が危機感を抱いていた。2017年ドラフト3位入団の福田周平は、出演したYouTubeチャンネルで、チームの選手事情についてこう話している。
「トレードとかでオリックスに来るじゃないですか。選手感のフレンドリーさにみんなビビッてますね」
これには「ラオウ」杉本裕太郎も、
「『大丈夫?』って一回、心配される」
と激しく同意。福田はさらに、
「僕らが仮に他球団に行った場合、気を付けないといけない。その感覚で行っちゃうと、(相手を)怒らせてしまう可能性がある」
こうした「慣れ」は、指揮官をもってしても解消できなかったようだ。昨シーズン限りで辞任した中嶋聡前監督の言葉を思い出す。
「今まで通りやっても、人って慣れるじゃないですか。その慣れという部分が、今年はより強く出てしまったのかなと」
そして選手に求めていた全力疾走など最低限の約束が果たされなかったことに、自らの責任を口にした。
「言ってもやれないんだったら、言ってないのと一緒」
オリックスは12球団で最も選手同士がフレンドリーなチームと言われている。ともすると全てが緩みがちになる危険性を孕むだけに、外様の九里がビシッと喝を入れたことには、大きな意味があるのだ。
(ケン高田)