年が変わっても、あのちゃんの活躍は依然、とどまるところを知らない。いつの時代もアンチの存在はあるが、SNSが広まってからは、とりわけ一部のアンチの声が拡散され、雪だるま式に大きくなる。どんな人気者でも一夜にして失墜するこのご時世に、決して万人に愛されるキャラクターとはいえないにもかかわらず、ここまで人気を高めて維持しているあのちゃん。その秘密はどこにあるのか。
その答えは、あのちゃんのアンチに対する態度にある。NHKホールで行われた1月14日の公演であのちゃんは、自身に送られてきた誹謗中傷のコメントが書かれた紙吹雪が舞う、実に洒落の利いた演出をした、という。
自分に向けられた負の感情すら、自身の装飾の一部として利用するという、いい意味でのふてぶてしさには、見習うべきところが多い。
人は「自分を嫌っている」と確信したり、そこまでいかなくとも「嫌われたかも」と疑念を持ってしまうと、どうしても相手におもねったり、その真意を知ろうとする。とかく現在は、誰もかれもが目の前どころか、見ず知らずの人間の顔色さえ窺いながら発言するような世の中なのだ。
しかし、あのちゃんは違う。
それは1月21日の「踊る!さんま御殿!!」(日本テレビ系)でのこと。「叱れない大人VS若者」をテーマにトークが繰り広げられる中で、声優の浪川大輔が、ふだん後輩を叱る際に、空気が悪くなることを恐れるあまりにライトな物言いになってしまい、その結果、叱った相手にナメられてしまっていると明かした。
「(叱るのって)めちゃめちゃ難しくないですか。こうやってバッて(きつく)言うと(相手が)『いやちょっと、ブチギレてるじゃん』ってなるのも嫌じゃないですか。その空気が」
これに、あのちゃんが割って入る。
「『もういいじゃん』と思います」
これには浪川をはじめ、他の出演者たちが一瞬固まったが、続けて出たあのちゃんの言葉で背筋を正すことになる。
「嫌われる勇気を持って下さい」
なるほど、「嫌われる勇気」を持っているからこそ、あのちゃんはアンチの声などワレ関セズで、キャラクターがブレることなく活躍し続けられるのだ。浪川は、
「あ、ありがとうございます。いや、勉強になります」
と恐縮しきりだった。
以前、オーストリア人の心理学者アルフレッド・アドラーの思想をまとめた「嫌われる勇気」という自己啓発本がヒットしたが、アドラー以上にあのちゃんがこの言葉を放つことで、どれだけ多くの人間に刺さることか。
(堀江南/テレビソムリエ)