ドジャース移籍が決まった佐々木朗希は「25歳ルール」に基づく650万ドル(約10億1600万円)のマイナー契約だが、キャンプ中に調整さえうまくいけばメジャー契約、3月18日と19日に開催予定のカブス戦(東京ドーム)に先発登板する可能性が残されている。
ドジャースは今季も先発投手6人制を継続する方針だ。山本由伸、タイラー・グラスノー、ブレイク・スネルは確定。残り3枠は佐々木と手負いのダスティン・メイ、クレイトン・カーショー、そして大谷翔平の状態次第。リハビリ中の3投手をシーズン後半まで温存するため、佐々木にはシーズン当初からの先発ローテ入りを期待していることだろう。
だが、佐々木が開幕戦デビューするには「2つの壁」が待ち受けている。
まずは「肉体改造」だ。米スポーツ専門チャンネルESPNのアルデン・ゴンザレス記者が「佐々木は20球団から8球団に絞り込んだ昨年末、各球団に宿題を出した」と発信した。宿題の中身は「昨シーズン、日本で佐々木の速球の平均球速が低下した原因を分析し、二度と起こらないようにするためのプランを提示して下さい」というもの。ゴンザレス記者は「佐々木は自信に満ちているが、自己認識もしっかりしている」と好意的に報じているが、一度も規定投回数に達したことのない佐々木の要求に「なんと過保護な…」と違和感を抱く人はいるだろう。
ドジャースが誇るモーションキャプチャーによる解析技術なら、佐々木の「宿題」に最適解は出せる。常にベストフォームで投げ続けるために一投ごとの動作のズレを解析し、同じフォーム、同じ球速で投げられない原因を突き止められる。
球団が手助けできるのはそこまでだ。解析の結果、球速が落ちた原因が佐々木の「筋力不足」「体力不足」と指摘され「二度と球速が落ちないための肉体改造プラン」を提示された場合、昨季もシーズン途中に登録抹消された佐々木がわずか2カ月で肉体改造し、メジャー契約にこぎつけられるのか。
ちなみに大谷はシーズン中、1時間以上の筋トレがルーティン。スクワットは200キロの負荷をかけ、肩から背中、ハムストリングスまでを鍛えるデッドリフトで、総量225キロのバーベルを持ち上げている。メジャー経験者のロッテ吉井理人監督、井口資仁氏は「腫れ物に触るように」佐々木のマイペース調整を認めてきたが、これからの佐々木は大谷と比較される。
そして「第2の壁」は、地元のロサンゼルス・タイムズ紙である。中国資本による運営で、編集長はアフリカ系アメリカ人。過去にはトヨタ自動車の大規模リコール事件を引き起こすなど、反日感情が根強いメディアだ。昨年11月には、佐々木とドジャースの事前交渉(タンパリング)疑惑を報じていた(最終的には、事前交渉を否定)。
さらには全国紙「USAトゥデー」の名物ナイチンゲール記者まで、佐々木のド軍入りに「ドジャースが悪の帝国の地位を揺るぎなくした」と、いきなり死球をぶん投げてきた。
人気球団入りするにあたり、アンチからの口撃に耐えられる相応のメンタルと覚悟が必要になる。これまで特別待遇に慣れてきた佐々木は、担当記者の怖さをナメていないか…。
(那須優子)