まずは問題です。中島美嘉、大島優子、柳原可奈子、渡辺徹、的場浩司…。彼らに共通しているものは何?
この問いに回答できれば、アナタは相当の芸能通と思われるが、驚くなかれ、彼らはいずれも過去に「妖精を見たことがある」と証言している芸能人なのだ。
とはいえ、相手は「妖精」。その姿形は見える人によって、ティンカーベルさながらの「羽が付いた女性」だったり「小さなおじさん」だったりと、様々だ。
翻ってスポーツ界にも五輪メダル獲得後に「妖精が見える」と発言し、日本じゅうを驚かせた女性アスリートがいた。2012年8月のロンドン五輪女子柔道57キロ級で金メダリストとなった松本薫だ。
かねてから「UFOを見たことがある」と公言するなど、柔道界隈では「不思議ちゃん」と呼ばれていた。金メダル獲得後のインタビューでは、現場アナからまさかの「ところで、妖精が見えるというのは本当ですか」の無茶ぶりに、大真面目に答えた。
「はい。柔道場で麦茶を飲もうとしたら、10センチくらいの緑色の妖精が現れました。本当です」
スポーツ紙記者の話を聞こう。
「ロンドン五輪柔道では男女ともにメダル獲得に苦戦する中、彼女が日本選手団の金メダル第1号にして、柔道では男女通じて唯一の金メダル。『野獣』というニックネーム通り、試合中には闘争心むき出しな反面、普段はひょうきんで人懐っこい。そうしたギャップも、彼女の好感度を上げる要因となりました」
凱旋帰国後、東京都多摩市での子供たちとの交流会の席でも、男の子から「松本さんは緑の妖精を見たことがあるそうですが、どうやったら見られますか」との質問が飛ぶ。彼女の答えはというと、
「こんぐらい(約10センチ)のちっちゃい人が、麦茶の中から出てきたこともあります。よく見たらちっちゃい人がいて、で、そのまんま玄関に向かって飛んでいって…。逆に『皆さんは妖精を見ていないんですか』と聞きたいですね。あの、たぶん普通に飛んでくるんで、それをじっと見てれば見えます」
やはり大真面目なのである。
2016年に結婚し、連覇に挑んだ同年のリオ五輪では銅メダルを獲得したが、試合後のインタビューでは、
「嬉しいのと悔しいのと。甘酸っぱい気持ちです」
とは語ったものの、こんなホンネも。
「腹の中は煮えくり返ってますよ」
2017年7月に女児を出産後、2020年東京五輪での「ママでも金」を目指したが、2019年2月に、現役引退を表明する。
「私の優先順位の一番が、柔道より子供になった。闘争心がなくなってきて、競技者としては終わったと気付いた。子育てと両立しながら『野獣』としての自分を維持していくのは難しかった」
まさに記録と記憶、そして数々の迷言を残したアスリートだったのである。
(山川敦司)