結局、10時間以上も話し続けたが、あれは何のための会見だったのだろうか。1月27日のフジテレビ経営陣による「やり直し会見」で明らかになったことは、ほぼ何もなかった。
中居正広と当該女性の間に何があったのかは、プライバシーを配慮するためという一点張りで何も明言せず。港社長が答えられそうにない質問を他の幹部が代わりに答えるなど、かばい合いの場面も見られた。
「事件」への関与が指摘されたものの、フジテレビが改めて否定した幹部社員への聞き取り調査のやり取り、そして中居が話したことをつまびらかにすれば済むものを、2カ月後に結論が出る第三者委員会の調査結果に委ねるという。プライバシーを盾に、どうして「最も肝心なこと」をここまで口ごもるのか…。
そんな世紀の茶番と同じような会見はこれまでも、多々あった。
2023年9月、ジャニー喜多川氏の性加害問題についてジャニーズ事務所(現STARTO ENTERTAINMENT)が4時間超えの会見を開いたが、ジャニー氏が性加害をしていた当時の社内事情に最も詳しいとされる最古参の元幹部は欠席。これが「キーマン隠し」と批判され、会見後には複数のCMスポンサーが撤退の検討や所属タレントの起用見送りを発表した。
翌10月に開かれた2回目の会見は前回同様、挙手をした記者を司会者が指名する形式ながら、それでも指名されない記者が「こんなの(手を挙げているのに指名されないのは)茶番だ!」と声を荒らげ、騒然となる。司会者が「まったく茶番ではございません」「フェアじゃない」「フェアです」押し問答になったが、後日、指名しない記者名を列挙した「NGリスト」の存在が明らかになった。意図的に質問封じをしていたことがわかったのである。
闇営業に関わる吉本興業の会見も酷かった。
2019年7月、吉本興業の岡本昭彦社長が5時間半にわたる会見を行った。しかしどんな質疑にも歯切れの悪い回答が続くなど、遅々として進まず、失敗に終わりました。これもまた今回のフジテレビ会見同様に時間無制限だったこともあり、ダラダラ続く有様だった。
フジテレビは制限時間を設けないまま明確に答えないという、泥仕合に持ち込んだ印象がある。いずれにしてもフジテレビの再生には難問山積だと言わざるをえない。
(魚住新司)