NHK連続テレビ小説「おむすび」でたびたび流れる楽曲に、安室奈美恵 with SUPER MONKEY’Sの「PARADISE TRAIN」がある。これがひときわクローズアップされたは、1月29日の第83回だった。
ヒロイン・米田結(橋本環奈)の実家がある神戸の商店街で靴店を営むナベベこと渡辺孝雄(緒形直人)が、結の姉・歩(仲里依紗)に聞かされたカセットテープに録音された、渡辺の娘・真紀(大島美優)の肉声を聞いて涙するというシーンが描かれたのだ。
1996年の阪神・淡路大震災で愛娘を亡くしてしまったナベベ。それから17年の歳月が流れ、ナベベは真紀の声や顔を徐々に思い出せなくなりつつあることを嘆いていた。その悩みを解消するため、歩が秘蔵のカセットテープを持参し、ラジカセで聴かせることに。
そして流れてきたのが、真紀と中学生時代の歩(高松咲希)が歌う「PARADISE TRAIN」だった。2人の中学時代を象徴している曲なのだが、安室奈美恵のシングルとしてはあまり認知度が高いとは言えないこの曲がなぜ、選ばれたのか。
「PARADISE TRAIN」は、安室がソロ歌手になる前に所属していたSUPER MONKEY’Sの、4枚目のシングルだ。1994年7月に発売され、オリコン週間チャートの最高位は137位。商業的には成功しなかった。
最大のヒット曲は翌1995年1月25日に発売された5枚目のシングル「TRY ME ~私を信じて~」。オリコン週間チャート最高8位を記録し、73万枚を売る大ヒットとなった。
この発売日からわかるように、「TRY ME」が世に出たのは阪神・淡路大震災の直後。真紀がこの曲を手にすることはなかった。こうした経緯から、安室関連シングルとしては最もマイナーとも言える楽曲が、歩と真紀を象徴する曲として選ばれたのだろう。
ちなみに現在、この曲はサブスクで聴くことはできず、CDのみ。ただし、オリジナルとは違うバージョン、すなわち新録バージョンのものが収録されている。
(石見剣)