10時間23分にわたって行われたフジテレビ幹部の「やり直し会見」で、記者たちから何度も質問が出たのが、フジサンケイグループの代表として君臨する、フジ・メディア・ホールディングスの日枝久取締役相談役の進退だった。
港浩一前社長らに対し、「なぜ日枝氏が会見に出ないのか」「この事態で日枝氏の進退は?」と問われるたびに、幹部たちは一瞬、動きが止まり、言葉をしっかり選びながら答えていた。その言動だけでも、いかに日枝氏に怯えているかがわかった。
「おそらく日枝氏は、潜伏先と報じられた都内の5つ星ホテルで、ぐっすり寝ていたのでは」(会見に出席した記者)
幹部たちはまるで想定問答集にでもそう書かれているかのように「日枝は実務を行っているわけではない」「日枝が全てを決めているわけではない」と繰り返し、「防波堤」になろうとしていた。
1月27日付での港前社長、嘉納修治前会長の辞任が発表され、翌28日には遠藤龍之介副会長が3月末をメドとしている第三者委員会の報告書が提出された後に、辞任する意向を明らかにした。
実は1月23日の社員説明会の前に港、嘉納、遠藤の3氏が日枝氏に辞意を伝えていたという。だが日枝氏は「こんなことで負けるのか、お前たちは!」などと一喝していたというから驚きだ。放送関係者が嘆息する。
「もはやフジサンケイグループ内だけで日枝さんを辞めさせるのは難しいんでしょう。書簡を送って会見の開催を促した大株主の米投資会社ダルトン・インベストメンツなど、株主たちがとてつもない『外圧』をかける以外に、方法はないのかも。とはいえ、日枝氏が退陣しても、ただの『相談役』という肩書を与え、院政を続けさせることになるかもしれませんが…」
フジテレビの企業風土は、本当に改善されるのか。
(高木光一)