お笑いコンビのクマムシがリリースしたシングル「あったかいんだからぁ♪」が、なんと2月に最もダウンロードされた楽曲となった。「レコチョクアワード月間最優秀楽曲賞 2015年2月度」のダウンロード(シングル)部門で1位を獲得したのである。
この「あったかいんだからぁ♪」は、もともとお笑いネタということから、8.6秒バズーカ─の「ラッスンゴレライ」や、最近人気が高まっているバンビーノの「ダンソン」とひとくくりで語られがちだ。だが、これらは音楽的にまったく異なるものだという。
「音楽的には歌ネタとリズムネタは明確に異なるものです。歌ネタがメロディ抜きでは成立しないのに対し、リズムネタは五七五など日本人が馴染んでいるリズムに即しており、いわば川柳みたいなもの。メロディは必要ないというか、むしろ不要なのです」(音楽ライター)
歌ネタで有名になったものには、はなわの「佐賀県」やテツandトモの「なんでだろう」、ムーディ勝山の「右から来たものを左へ受け流すの歌」などがある。これらのネタはすべてCD化されており、とくにムーディ勝山の「右から左」は着うたとして200万件以上もダウンロードされた。
そのなかでも、「あったかいんだからぁ♪」は前述の月間ダウンロード数1位に加え、2月16日付のオリコン週間CDシングルランキングでも10位にランクインするなど、桁違いのヒットとなっている。人気には様々な理由があるが、そのひとつを前出の音楽ライターが解説する。
「この曲はテンポがBPM=105とゆっくりめ。最近のJ-POPでは130以上が当たり前で、異色だと言えますね。昨年に大ヒットした『レット・イット・ゴー』も137と速めですが、ひと昔前のヒット曲には110程度の落ち着いたテンポの曲が多く、それくらいの速さに耳が馴染んでいる人も少なくありません。今どきの曲を速すぎると感じている人たちには、『あったかいんだからぁ♪』が心地よく聴こえても不思議ではないのです」
ちなみに「ラッスンゴレライ」や「ダンソン」のテンポは170とチョッ速。オリエンタルラジオの「武勇伝」でさえ135くらいだったので、速いビートに慣れている若者にはウケても、大人世代にはちょっと耳障りかもしれない。
また、フルバージョンの「あったかいんだからぁ♪」には、2つほどの仕掛けが施されている。まずはテンポが徐々に速くなり、最後にまた元のテンポに戻るというもの。もうひとつは、曲が進むごとにメロディが半音ずつ上っていくのである。これによりゆっくりとしたリズムながら高揚感を感じさせてくれるわけだ。
「クマムシの2人はもともと音楽好きで、ギターも弾けます。半音ずつ上がっていくメロディもギターでコードを付けて作曲したからでしょうね。ただギターに頼りすぎると、歌ネタから逃れられなくなる。ギターを持たないでステージに上がっているのは正解だと思いますよ」(前出・音楽ライター)
ギターだけでなく、歌ネタにも頼らずに人気を維持できるのか。歌わないクマムシのネタにも今後注目してみたい。