悪質な客引きが横行している現状を、裏社会に詳しい編集者の久田将義氏はこう分析する。
「暴排条例が施行され、地回りできず、客引きのタチが悪くなりました。親分の顔を知らずに声をかけ、あとをつけていた子分にどやされた客引きもいました。最初から確定申告前の3月に店を飛ばすことを見据え、短期の荒稼ぎをしているんでしょう」
ならば今が最後の稼ぎ時だろう。歌舞伎町のボッタクリ被害をまとめたサイトを運営する、青島克行弁護士に現在の状況を聞いた。
「去年後半あたりから、毎晩のように被害者の電話が来るようになりました。私にできることは電話でのアドバイスのみ。弁護士を使うと、ボッタクリ金額と同じか、それを超える弁護士費用がかかってしまう。それを私の専業にすると、結局、ボッタクリ店と共存共栄することになる。無力感を感じることもあります」
交番が民事不介入を貫くあまり、結果的にボッタクリ店による料金回収の“装置”となっていることが問題だ、と青島氏は指摘する。
「私は店を検挙しなくていいとさえ思う。それより交番まで逃げてきた客を救ってほしい。彼らは交番が対応を変えるだけで救えるのですから。例えば、繁華街の警察が、『請求が正当なら、あとで裁判を起こしなさい』と店側に言い、その場で双方を帰らせる。その程度の対応がなぜ警察にできないのかわからない」
いったい警察はどう考えているのか。警察庁に尋ねたが、
「歌舞伎町のことは警視庁に聞いてほしい」
ならばと警視庁に聞くと以下の回答がファックスで送られてきた。
「関係法令に基づいて、積極的な取締りを実施するとともに、被害防止のため、繁華街への来訪者に対する注意喚起を行っています」
はたして本当にそうだろうか?
夜の歌舞伎町交番付近では、店員と被害者の言い争いが毎晩繰り広げられている。ピーク時には平日夜にもかかわらず、5~6組で合計20人ほどの集団になることもある。
警察の言う“注意喚起”とは、ただ看板を立て音声を流すことらしい。被害防止どころかボッタクリ集団を野放しにしている状態は誰でも見ることができる。
「自衛の意志を持つことが大事です。対策は『客引きについていかない』、これに尽きます。運悪く店に入ったら、決して支払わず、交番で警官立ち会いの下、民事で金額を争うことにし、連絡先を交換し、タクシーでその場から立ち去る。嫌がらせ電話がかかることもありますが、現状これしかありません」(青島氏)
3月決算のあと、ボッタクリたちは“より巧妙な手段”で次の被害者を狙っている。