数年前と比して、全国の歓楽街で今、ボッタクリの被害が倍の勢いで増えている。その手口はあまりにも巧妙で条例も追いつかず、交番に逃げ込んでも警官は手助けさえできないという。泣き寝入りするしかない被害者を直撃、ボッタクリ最前線で見た新たな手口に迫った!
「1時間4000円です」
昨年12月1日の朝5時頃、新宿・歌舞伎町でそんな客引きの言葉に誘われて、そっち系の飲食店「CLUB Cenote〈セノーテ〉」に入った男性がいた。だが、つい眠り込み、昼に起きると延長料などを加算され、請求された金額はなんと51万円。男性が払えないと伝えると店の従業員らは、
「働いて返せ」
と腹を殴りながら迫り、約13時間もトイレ掃除や客引きなどの強制労働をさせたのだ。
結局、今年2月23日になって、ようやく従業員らが逮捕されている。
国民生活センターによると14年度の外食の「高価格料金」に関する相談件数は5年前の373件に対し、785件(2月24日時点)と2倍以上になった。繁華街では確かにボッタクリが激増しているのだ。
夜11時頃から午前3時頃まで歌舞伎町交番の脇でボッタクリ店の店員と議論していたのはAさんだ。金を支払うハメになったAさんを直撃すると、ボッタクリ店側の巧妙な手口が明らかになった。
「ボッタクリ店に行ったのは客引きに紹介されたからですが、その客引きは以前から知っていた男だったんです」
去年の10月に初めて会い、「1時間5000円」の店を紹介されたという。その日はそのとおり安全に遊べた。その後、別の店を紹介され、ハシゴしたこともあったという。
「すっかり信用してしまって、彼の連絡先を聞いて、歌舞伎町に行く際には相談したりさえしていました。3~4回ですかね。今日も彼から『歌舞伎町に遊びに来る際はぜひ』みたいな連絡がメールで来たので、友人と遊びに来たんです。今にして思えば、この時だけは彼の様子が違った。いつもは複数のお店から選択させてくれるのに、新装開店だという店を強く勧めてきました」(Aさん)
信頼を得るために3~4カ月前から客を「手なずけ」ていたわけだ。お店に入る際、客引きはこう言ったという。
「今回は特別割引なので、他のお客さんに知られるといけない。店内ではお金の話はしないで」
通された店内では、早くも高額請求の前フリが待っていた。
「まず最初に会員制なので、会員登録してくださいと言われ誓約書にサインをさせられました。その際の条項の一つに入会金は24万円ってあったんです」(Aさん)
払わなくてもいいか、と確認するAさんに黒服は、
「わかってます」
とだけ答えた。
「その後、女の子がつき、50分ほどで会計すると、請求されたのはなんと41万円。聞いていた金額と違うと文句を言うと、『客引きは自分たちと関係がない』と言い、明細を出してきました」(Aさん)
Aさんにとっての地獄はここから始まった。