メジャーリーグ機構とスポーツ専門局ESPNが「35年の関係」に終止符を打つ。同局は毎週日曜日に「Sunday Night Baseball」と題し、メジャーリーグの試合を中継してきた。
2021年シーズンから7年の新契約が更新され、今季の中継が35年目だった。2024年オフにメジャーリーグ機構、ESPNともに契約を破棄できるオプトアウト権があり、ESPN側がそれを行使した形だ。ESPNは「年平均5億5000万ドル(約825億円)」の放映権料を、メジャーリーグ機構に支払っていたという。
今季の中継をもって、同局の試合放映は終了となる。新しい中継局を見つけなければ、メジャーリーグ機構は大損だ。しかし「新しい契約先はすぐに見つかると思う」というのが大方の意見である。
その根拠となるのは、昨秋のワールドシリーズの平均視聴者数が、過去10年で最多となる1580万人を記録したこと。アメリカ市場では「野球人気は回復傾向にある」と捉えられている。それでもESPN側が「試合中継をやめる」と判断したわけだが…。
「ESPNが放映権料の値引きを打診し、メジャーリーグ機構が応じなかったためと伝えられています。12月と1月、米スポーツ報道の主役はアイスホッケーです。しかし今年の冬は佐々木朗希の去就が注目され、野球関連のニュースが大きく報じられていました」(現地ジャーナリスト)
アメリカにはスポーツ専門の中継局がいくつかある。ESPNの中継はなくなっても、FOX局がワールドシリーズやオールスターゲームを放送している。ご贔屓の地元球団の試合を見るのであれば、ケーブルテレビ局があるから困らない。衛星放送局と契約することで、地元球団以外の試合を見ることもできる。34年も続いた「Sunday Night Baseball」が終了するのは寂しいことだが、こんな情報も聞かれた。
「ESPNの視聴者層はバスケットボールのNBAやアメフトのNFLを支持する人が多いんです。野球のシーズンオフや3月、4月の間は『Sunday Night Baseball』の時間帯で全米の女子大学生バスケットボール大会が放送されており、反響は大きいそうです」(前出・現地ジャーナリスト)
バスケやアメフトのファンはESPN、野球ファンはFOXや地元ケーブル局。そんな棲み分けがなされているようだ。しかし、佐々木人気はアメリカの女子大生に負けてしまった、と言えなくはない。佐々木の結婚が発表されたので、女性ファンの拡大は狙えないだろう。野球で見返してくれればいいのだが。
(飯山満/スポーツライター)