原材料費や光熱費、人件費などのコスト増を受け、外食チェーン店では「値上げラッシュ」が続いている。
ところが、である。客足はファミレスやファストフードなど、全ての業態で減るどころか、むしろ増え続け、外食チェーンの売り上げは過去最高を更新し続けているのだ。
例えば「ロイヤルホールディングス」は2月13日、「ロイヤルホスト」と「天丼てんや」の一部商品の「さらなる値上げ」に踏み切った。にもかかわらず、2月14日に発表した2024年12月期の連結決算を見ると、売上高は前期比10%増の1521億円、純利益も同47%増の59億円と、いずれも過去最高を更新している。
同様に、ファミリーレストラン大手の「すかいらーくホールディングス」が2月13日に発表した2024年12月期の連結純利益も、前期比3倍増の139億円に急拡大。2025年12月期も前期比6%増の148億円と、4期連続の増収となる見通しが示されたのだ。
実は日本フードサービス協会が今年1月に公表した「外食産業市場動向調査」の結果を見ても、2024年の外食産業市場の売上高は3年連続で前年を上回っており、値上げラッシュが外食チェーンの業績を押し上げていることが浮かび上がってくる。
とはいえ、客は喜んで財布を広げ、外食チェーンに貢献しているわけではない。どうすれば「客泣かせ」の値上げラッシュに「待った」をかけることができるのか。そこで思い出されるのが、今年1月にガンとの壮絶な戦いの末、ついに力尽きて他界した経済アナリスト・森永卓郎氏が遺した教訓である。
庶民から「モリタク」の愛称で親しまれた森永氏は、昨年10月17日に「東スポWEB」に寄稿した記事で、牛丼チェーン店の吉野家が10月9日から1週間限定で牛丼を100円引きにするとのキャンペーンを取り上げ、レギュラー出演するニッポン放送のラジオ番組で、次のように発言したことを紹介した。
〈やればできるじゃないか。1週間と言わず、ずっとやって欲しい〉
圧巻だったのは、これに続く以下のくだりだった。
〈それ(内部留保)を企業が賃金に回さない以上、労働者の生活を豊かにする唯一の方法は、企業に対して徹底的な値下げを要求することだ。(中略)いま消費者に求められていることは、1円でも安い商品を選択することだ〉
要するに、森永氏のこの遺訓に従えば、外食チェーンの値上げラッシュを阻止できる方法は、消費者である客が声を上げて行動に移す以外にない、ということになる。
まさに至言。消費者による「喝」は「天の声」にほかならないのだ。
(石森巌)