アニメやドラマなどの映像作品には、ときに「お蔵入り」する回がある。古くは特撮番組「ウルトラセブン」の第12話「遊星より愛を込めて」が有名だ。
この回はスペリウム爆弾の実験で被爆し、健康被害に悩んだ宇宙人「スペル星人」が、地球人の血液を集めるというストーリー。これに被爆者団体からの抗議が殺到して再放送時に「欠番」となり、今なお封印されている。
お蔵入りした作品は、その後の再放送やメディア化の際にも欠番となるケースが多く、なかなか視聴する機会がないのが現状だ。しかし、まれにYouTubeや動画配信サイトなどで「復活」放送されることがある。
ほのぼのとした日常の中に見え隠れするシュールな展開が秀逸なアニメ「ちびまる子ちゃん」(フジテレビ系)にも、実は幻の封印回があることをご存じだろうか。それがなんと期間限定で無料公開されているのだ。
「アニメタイムズ」の公式YouTubeチャンネルが3月1日から無料公開しているのは、「ちびまる子ちゃん」第1期シリーズ第116話「永沢君の家、火事になる」だ。
この回は、まる子と祖父の友蔵が、近所の火事に野次馬として見学に行くと、実は燃えているのが友人の永沢君の家だったというエピソード。
火事の翌日、丸尾君の提案で「永沢君を励ます会」が行われる。ところがクラスメイトからは「昨日は新聞に出てたな。よかったな」などと空気を読まない言葉が投げかけられ、落ち込んだ永沢君から「みんなはいいよな、火事にならなかったんだから」というセリフが飛び出す、衝撃的なものだ。
いつも冷静な永沢君が「僕の大切な本がぁぁ! みんな燃えてなくなっちゃうよぉぉ!」と取り乱して泣き叫ぶ衝撃的なエピソードゆえ、フジテレビには当時、クレームが殺到。以降はお蔵入りとなり、いまだにリメイクもされていない。
そんな幻の回が配信されたのだから、ファンが見逃すわけがない。公開からわずか4日で、113万回超の再生回数を記録する盛況ぶりだ。
ただし、全ての視聴者が歓迎しているわけではないようで、やはり批判の声も上がっている。なにやら配信のタイミングが問題視されているようなのだ。
「大船渡の人たちが大変な思いをしてるのに。さすがに不謹慎。今じゃないだろ。炎上商法としか思えない」
…というのがその理由である。
2月26日に岩手県大船渡市で発生した大規模な山林火災は、平成以降では国内最大規模となっており、今なお火の勢いは衰えていない。アニメのエピソードとはなんら関係ないとはいえ、このタイミングでの公開を不謹慎だと考える人が出てくるのは当然のことか。
大船渡市の山火事に全く配慮することなく公開に踏み切ったのは、ある意味、さくらももこイズムを体現しているように思えるが、賛否が大きく分かれることとなった。
(ケン高田)