クリクリとした大きな目に、いつも出たままの舌、短い手足…。一見すると可愛らしいかどうかはビミョーな猫。これが「見ているだけで癒やされる」として、世界中の猫好きから愛されてきた。「永遠の子猫」と呼ばれたリルバブだ。
リルバブは大人になっても大きくなれない「小猫症」を患う雌猫だった。2011年6月、野良猫が産み落とした子猫のうちの1匹だ。それを飼い主になるマイク・ブリダヴスキィさんが発見し、リルバブと名付けた。
この子猫、半年が過ぎても体はいっこうに大きくならない。当初、ブリダヴスキィさんは単なる発育不良と思っていたのだが、その後、獣医によって、先天性の「小猫症」という病気を抱えていると指摘された。さらに指が通常よりも多い「多指症」と「大理石骨病」などの難病を抱えていることが明らかになったのである。
リルバブは年を経ても、体重が2キロに届かないまま。ブリダヴスキィさんはそんなリルバブの日常をアメリカのSNS「Tumblr」にアップしたところ大反響となり、Facebookには瞬く間に100万人を超えるファンが登録することに。
その後もリルバブ人気は衰えることなく、Instagramでも二百数十万人のフォロワーを獲得する。この10年で最も有名な猫、と称されるようになった。
ブリダヴスキィさんはSNSを通じて、リルバブのオリジナルグッズを販売。その収益金の一部を、同様の病を持つ動物の研究を行う団体へ寄付したり、2015年にはリルバブのゲノム解析を行うクラウドファンディングを実施した。
しかし、別れは突然にやってきた。2019年12月1日、リルバブはブリダヴスキィさん夫妻が寝ている間に、静かに虹の橋へと旅立ったのである。まだ8歳半だった。
ブリダヴスキィさんはInstagramで、リルバブとの別れをこう綴っている。
〈私たちと一緒に愛に包まれて眠っていましたが、すやすやと眠りながら突然、亡くなりました。リルバブは進行性の骨の感染症と闘っていましたが、その状態を知っていてもなお、こんなに早く、何の前触れもなく逝ってしまうとは思いもしませんでした。親愛なるバブ、僕は君の気前の良さと惜しみない愛、たくさんの奇跡と喜びを世界に運ぶ並外れた能力を忘れないよ。君の飼い主に選んでくれて本当に誇りに思う〉
訃報に触れ、長年にわたって癒やしと喜びを与えてくれたリルバブには、多くの人々から「ありがとう」「決して忘れないよ」「天国でゆっくり休んでね」といった温かい言葉が寄せられた。
最後まで大きくなれなかったリルバブ。その表情はまるで眠っているように穏やかだったという。
(灯倫太郎)