今年も「花粉症」のトップシーズンがやってきた。
テレビのワイドショーでも連日のように花粉症問題が取り上げられ、出演者らが次々と「私も花粉症で」などとコメントしている。街の声を拾ったVTRでも同様の訴えが続出するなど、「猫も杓子も花粉症」のごとき現状が伝えられているのだ。
しかし、である。筆者は「この話、ちょっと変ではないか」と感じているのだ。
全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国調査によれば、日本人の花粉症の有病率は1998年が19.6%、2008年が29.8%、2019年が42.5%と、確かに10年単位でおよそ10%ずつ増加している。その後の調査は行われていないが、仮に同様の増加傾向が続いているとしても、現時点における有病率は50%程度とみられるのだ。
日本人の2人に1人がかかるとしても、猫も杓子も花粉症を訴えるという状況は、統計学的にはありえない。つまり「あなたは花粉症ですか」と聞かれた時、多くの日本人が付和雷同的にウソをついている可能性が浮上してくるのだ。
そこで面白い話を紹介したい。筆者はかつて「花粉症」を装っていると思われる「友人」と「その取り巻き連の若い女性たち」を問い詰めたことがある。
夜の酒席で花粉症が話題に上った時のことだ。友人が「オレさあ、最近さあ、花粉症でさあ」と言い出すや、女性たちも「私もそうなの」「目がかゆくて」「ティッシュは手放せない」などと訴え出し、筆者を除く全員が「花粉症にあらずんば都会人にあらず」とでも言いたげな「花粉症自慢」に花を咲かせていったのである。
しかし友人や女性らの様子を観察すると、目が充血していることはなく、鼻水が出ているわけでもない。健康体そのものなのだ。「これは怪しい」と感じた筆者が友人に「オマエ、花粉症なんてウソだろ」と切り出すと、友人はやおら指先で目の周りを強くこすりながら、目に少し赤味を帯びさせてから「ウソなんかついてないわい」と応酬した。
そこで筆者は「オマエの性格はよく知っている。自意識過剰系の付和雷同型なんだよ。花粉症はオシャレとでも思っているんだろ」とツッコミを入れた。はたせるかな、これがトドメとなり、ついに友人は「ごめん、ウソついてた」と白状したのだった。
ちなみに、女性たちにも「本当に花粉症なのか」と尋ねてみたが、彼女らはバツの悪そうな表情を見せながらも、最後まで花粉症であることを主張し続けたのだった。
(石森巌)