2026年北中米W杯アジア最終予選(3月20日・バーレーン戦、3月26日・サウジアラビア戦、ともにホームゲーム)が目前に迫ってきた。グループCの日本は独走状態。間違いなくこの2試合で本大会出場を決めるだろう。
特に注目してほしいのが、バーレーン戦。勝てば文句なしで本大会出場が決まるが、この結果には史上最速でのW杯出場がかかっている。
簡単におさらいすると、勝てば自力で史上最速W杯出場を決める。たとえ引き分けても、他会場の結果次第では、史上最速W杯出場が決まる。その可能性は高い。
とはいえ、バーレーンもサウジアラビアも、簡単には勝たせてくれない。なぜなら、日本が勝ち点16で独走しているが、2位のオーストラリアから最下位の中国までは勝ち点差1でひしめいている。つまり、2位以内で本大会出場を決めるチャンスは、どこの国にもあるのだ。だからたとえ相手が日本であろうと、アウェーであろうと、勝ち点1をもぎ取りたいという気持ちは強い。
バーレーンはホームで日本に0-5と大敗しているが、今回は全く侮れない。なぜなら、昨年12月のガルフカップ(ペルシア湾諸国による大会)で優勝し、しかもアジア最終予選を戦うサウジアラビアにも勝っているからだ。
バーレーンリーグは急遽、3月7日から約1カ月間、中止となった。代表チームは3月9日から国内キャンプを行い、14日には来日。時差と寒さ対策に備えている。日本代表選手が15日、16日の試合を終えてから合流することを考えれば、バーレーンの本気度が感じられる。
サウジアラビアも昨年12月に開かれたFIFA臨時総会で2034年のW杯開催国に決まり、国内は盛り上がっている。ここから巻き返しを狙っているに違いない。
迎え撃つ日本代表はサプライズ招集もなく、ケガをしている選手が外れ、ケガから復帰した選手を招集しただけ、と言っていい。注目はセルティックで決定力の高さを見せている前田大然をワントップで使うかどうか、くらいか。
森保一監督は最終予選に入っても、招集メンバーをほとんど固定している。2試合行われるインターナショナルマッチデーでも3人以上、先発を変更したことがない。メディアが「この選手を使え」「サプライズ招集は誰だ」と盛り上げようとしても、メディアや世論の考えに左右されることなく、いつもメンバーを召集してきた。それが森保流のやり方だった。
しかし今回のメンバー発表会見では、こんなことを言っている。
「最速でW杯出場を決めれば、メリットしかない。選手をより多く試すことができるし、戦力となる選手を増やしていくことができる。戦術、システム、試合の中での戦い方などなど、いろんなことを試しながら最終予選を戦っていける、というメリットがある」
W杯出場を決めたら新戦力を試す…そう言い切ったのだ。バーレーン戦に勝てば、サウジアラビア戦の先発はどういうメンバーになるのか、6月の最後の2試合にはどんなメンバーが招集されるのか。チーム力をもうワンランク上げるために、何をするのか。森保ジャパンの新しい章の始まりだ。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。