日本のステージに立つのはなんと、18年ぶり。多くの苦難を経てようやくの復活を遂げるのは、歌手の桂銀淑(ケイ・ウンスク)だ。4月26日と27日の両日、東京・西新宿のヒルトン東京でディナーショーを開催するという。だがこれだけブランクがあると「桂銀淑って誰?」という人もいるのではなかろうか。今は当たり前になった韓流ブームの先駆けにして韓流アーティストの元祖といえば、この人なのである。
2003年のドラマ「冬のソナタ」をきっかけに、日本で巻き起こった韓流ブーム。その後、東方神起や少女時代、TWICE、BTSと、K-POPブームは受け継がれる。配信ドラマ全盛となり、「愛の不時着」「梨泰院クラス」など、日本でヒットした韓国作品は数多い。芸能界のみならず、韓国風メイクが若者に人気を博すなど、もはや韓流は日常に定着しているのだ。
ベテラン芸能ジャーナリストが、彼女の華麗なる来歴を解説する。
「作曲家の浜圭介に師事し、1985年に日本デビューすると『すずめの涙』『夢おんな』『ベサメムーチョ』とヒット曲を連発。韓国ではモデルとしてデビューし、CMキャラも担当した美麗なルックスとハスキーボイスで大人気になりました。『NHK紅白歌合戦』には7年連続で出場。1994年には芸能生活10周年の節目で、当時はまだ日本語の歌が禁じられていた母国で日本語歌唱のパフォーマンスを行いました」
だが2000年代に入ると、順調だったキャリアが暗転する。きっかけは、所属事務所との裁判沙汰だった。
「借金トラブルで、2億5000万円超の返済を求められていました。実際には個人の借金ではなく、事務所側の採算度外視のコンサート運営による赤字が大きかったのですが、彼女自身も億ションのローンや離婚した元夫の事業失敗などが重なり、数億円規模の負債を抱えていたそうです、そこに更年期障害やうつ病などの体調不良が加わり、ついには2007年に覚醒剤所持で逮捕されてしまいます。翌2008年に執行猶予付きの有罪判決を受けて、国外退去を命じられました」(前出・芸能ジャーナリスト)
ところが韓国に帰ってからも、お騒がせは続いた。音楽活動を再開したものの、2014年に巨額の詐欺事件に巻き込まれ、2015年には再び覚醒剤使用で韓国当局に逮捕される。懲役1年2カ月と罰金80万ウォンの実刑判決で、韓国の最高裁である大法院まで争うものの、敗訴。2016年8月に、満期で出所した。
その後、キリスト教の洗礼を受けて、毎週日曜日にソウル市内の教会に通うようになった。そこから地道に音楽活動を続け、2019年に韓国でアルバムを発売。昨年は「日韓歌王戦」にゲスト出演した。
「今年は日韓国交正常化60周年。桂銀淑を再び日本で、との後押しを受けてのディナーショー実現となったそうです」(スポーツ紙芸能担当記者)
人生の酸いも甘いも噛み分けた歌声は、以前よりも心に刺さりそうだ。