世はまさに「海鮮丼ブーム」である。テレビのグルメ番組の食レポでも、タレントにバカのひとつ覚えよろしく、ボキャ貧丸出しの「ウマイ!」を連発させ、これでもかと言わんばかりに煽り続けている。
しかし、である。海辺での暮らしが長い筆者に言わせれば、海鮮丼なんぞ、気色の悪い邪道な食い物以外の何物でもない。
だいたい、アツアツの白飯に海鮮を盛ったら、海鮮の生汁が白飯に滲み出してしまう。その結果、せっかくのピュアな白飯が「生臭く」なってしまうばかりか、肝心の海鮮も白飯の熱によって「生ぬるく」なる。
中でも言語道断なのは、海鮮が丼から溢れるほど盛られた「てんこ盛り海鮮丼」、いわゆる「デカ盛り海鮮丼」である。
グルメ番組の食レポを見ると、レポーターは「下のご飯が見えない!」などと奇声を上げて、やおらデカ盛りに食らいついている。
だが多くの場合、一般客はてんこ盛りの海鮮を別皿に移した上で、海鮮をわさび醤油にくぐらせながら、生臭い白飯を平らげているのだ。ならば、最初から海鮮と白飯を別々にした上で、刺身定食のような形で提供すればいいだけの話だろう。
要するに昨今の海鮮丼ブームは、多くの視聴者がハマッている「インスタ映え」などを意識したヤセラ企画にすぎないと、筆者は感じているのだ。
ちなみに、日本にはマグロの赤身やヅケなどを冷えた寿司飯に乗せる「鉄火丼」や、錦糸卵や茹でエビなどを乗せた「ちらし寿司」などの食文化が存在する。筆者も海鮮の生臭さを寿司飯で打ち消す、これらの伝統的なメニューは大いにウェルカムである。
言うまでもなく、食の好みは人それぞれだ。だからこそ、ヤラセ番組なんぞに流されることなく、自らの舌と目に忠実であってほしいのである。
(石森巌)