今やNHK連続テレビ小説は「朝8時開始」が当たり前となっているが、それは今から15年前の2010年春、第82作「ゲゲゲの女房」からのこと。それまでの48年間は、1962年の第2作「あしたの風」からずっと「8時15分開始」だった。
だが生活リズムの変化により、8時15分スタートの朝ドラが低迷していたことから、時間を15分繰り上げて「8時スタート」に踏み切った。
この歴史的改編が功を奏してか、以降、朝ドラ人気は回復していくが、この変更がテレビ業界の「朝の地図」を大きく塗り替えることになる。
当時はTBSの「みのもんたの朝ズバッ!」、フジテレビの「とくダネ!」、日本テレビの「スッキリ!!」、テレビ朝日の「スーパーモーニング」など、民放の情報番組が軒並み「8時開始」でしのぎを削っていた時間帯。そこへ朝ドラが「本丸突入」してきたのだから、民放各局は一気に危機感を募らせる。
「朝ドラの時間に被せるだけでなく、『あさイチ』という後番組で、勢いそのままに引き継ぐ流れが完成してしまった。当時、民放局は完全に後手に回りました」(番組制作関係者)
この改編に長年、手をこまねいていた民放だが、「ZIP!」(日本テレビ系)が2023年4月3日から放送時間を1時間拡大し、朝9時までの3時間番組に。NHKにチャンネルを替えさせない作戦に打って出た。7時52分から8時10分まではCMをいっさい挟まず、ノンストップで放送している。
さらにフジテレビもこの3月31日から、1994年スタートの長寿番組「めざましテレビ」が番組史上初めて8時台に進出し、8時14分までの放送に拡大。これにより、同じく朝ドラ阻止の構えを見せることになった。CMも7時56分から8時5分までは入らない作りに。現在は8時14分から新番組「サン!シャイン」がスタートし、「あさイチ」にさえ目移りする隙を与えまいと、鉄壁の布陣を敷いている。
我々が何気なく見ている「朝の15分」だが、情報番組の命運を左右する「秒刻みの戦場」となっているのだ。
(魚住新司)