テレビ業界にとって今年は「新しい稼ぎ方」を模索する1年になりそうだ。
国際プロデューサーの仁龍之介氏が語る。
「どれだけ物が売れたかわからないテレビCMよりも、宣伝効果が可視化されるネット広告に出稿したほうが企業としてもメリットが大きい。スポンサーに広告枠を売って番組を作るだけの収益構造はいよいよ限界です。今後は都市開発やイベントといった非テレビ事業、コンテンツライツ関連でのマネタイズの比重がさらに大きくなるでしょう」
「大いに伸びしろがある分野」として「テレビ通販」を挙げて、仁氏が続ける。
「『いいものプレミアム』(フジテレビ系)、『日テレポシュレ』(日本テレビ系)など各局がネットと連動した通販事業を行っていますが、今後のモデルケースとなりそうなのがテレビ朝日の通販番組『今田耕司★ヒットの世界 東大生が通販してみた!!』です。芸能人と東大生が商品を忖度なしに調査する内容で、バラエティーとしても成立している。今後はこうした『売るだけではないテレビ通販』が主流となってくるでしょう」
かつては旬を過ぎたタレントが起用される印象が強かったが、今や大物芸能人がこぞって登場する通販番組。今田の他、ヒロミ、麒麟の川島明といったMCクラスの芸能人が出演している。芸能プロ関係者は言う。
「近く通販番組が地上波ゴールデンで放送されるかもしれません。業界内では吉本芸人がトークを交えて商品を宣伝するBSよしもとの通販番組『チーキーズストア』が面白いと評判で、これと同じコンセプトで地上波の特番を制作するプランが出ているんです。目玉となるプレゼンターはダウンタウン。実現すれば通販番組の歴史が塗り替わりますよ」(前出・芸能プロ関係者)
片や配信事業で注目を集めるのは、昨年のカタールW杯全試合中継で存在感を発揮したABEMA。さらなる躍進が続きそうだ。
「次に目をつけているのが3月の『WBC放映権』です。解説もW杯での本田圭佑に負けないくらいインパクトある人選を見据えていて、社内では『なんとしてもイチローを確保せよ』の号令がかかっています。悲願である黒字化を目指しています」(ABEMA関係者)
さて、テレビ各局が狙うのはABEMAの2匹目のドジョウだ。民放局関係者が語る。
「フジテレビのFODなど既存の公式配信サービスは外資系のNetflix、アマゾンプライムビデオに大幅に後れを取り、このままではジリ貧。今後は現行のサービスに生配信を取り入れた『ABEMAモデル』に移行するのは必然です。テレビ朝日がABEMAの事業に乗り出す以前、キー局主導のネットテレビでは05年にスタートした『第2日本テレビ』があえなく失敗していますが、ようやく時代が追いついてきた。23年は各局にとってネット生配信再チャレンジの年になるはずです」
とはいえ、敗退は許されない。各局ともに“勝利の方程式”を頭に描いているという。
「ABEMAが軌道に乗り始めたのは、年間200億円超の赤字を出してもテレ朝とのタッグで事業を続けた『サイバーエージェント』があってこそ。どの局でも『ネットテレビをやるには大手ITと組む必要がある』との認識です。23年にはあっと驚くタッグの発表があるかもしれません」(前出・民放局関係者)
ネット配信に呑み込まれそうなテレビ業界は、激動の1年となりそうだ。