猫はどんなニオイがするのか。改めて考えてみたことがない人がほとんどかと思う。わかりやすく理由を言えば、これといったニオイがしないから。無臭とはいわないが、「これが猫だ」というニオイを感じたことがないのだと思う。
義母が亡くなる前に3年ほど引き取ったが、引っ越して来てすぐに「猫はお風呂に入らないの?」と言われた。猫は愛玩動物だが、獣だから臭うので、お風呂に入れるか、シャワーで体を洗うと思っていたようだ。
ちょっと浮世離れしている気がするが、よくよく考えてみれば「そういえば、臭わないよね」と、言われて初めてニオイがないと気が付いた。
ではなぜニオイがないのか。猫が汗をかかないのと、体をきれいにするために毛繕いをするのが理由だといわれている。確かに我が家のオス猫3匹も、よく毛繕いしている。
長兄ガトーは、大きなお腹を見せながらやっていることもある。末弟そうせきは小顔の割に舌が大きく真っ赤で、その舌でベロベロやっている。
しかし毛皮を着ているわけだから夏はかなり暑いはずで、汗をかかないのは不思議な気がする。
それから、毛繕いするからといっても、体の隅々までできるわけではないから、舐め切るのは難しい。よく長兄のガトーがクールボーイ、そうせきの2匹の弟を舐めていることがあるが、それも効果ありなのかもしれない。
そういうわけで、猫はお風呂に入れたり、シャワーしたりする必要はないが、たまにお風呂やシャワーの動画を見ることがある。知り合いにも定期的に、猫をお風呂に入れている人がいる。なので、自分ももお風呂に入れてみようかと思ったことがある。
しかし、水が嫌いなようだ。足をお湯につけようとしたら嫌がるので、やめてしまった。そもそもガトーは、台所や洗面台の水が飛んだだけでも逃げて行く。なので、足元にまとわりついたりして邪魔な時は、水をピュッとかけてやるのだ。
調べてみると、お風呂に入れるにしても、面倒くさそうだ。お湯の温度は何度くらいがいいか、シャンプーはどんなものを使うか、体を洗った後はドライヤーで乾かした方がいいか…。わからないことが多い。他にも猫が嫌がることは多いようだ。
ただし、全く臭わないかというと、便だけは強烈だ。とりわけ香ばしすぎるのが、体重9.8キロと大型のガトー。人間並みの便を放出した途端、部屋中にニオイが拡散され、鼻をつまみたくなる。そのまま放っておくことはできないので、もちろんすぐトイレに流す。
ニオイという点では、不思議な猫の行動がある。人間のニオイに関してだ。着ていたシャツや部屋着を脱ぎっぱなしにしていると、とりわけワキの下の部分をクンクン嗅いでいる。シャツにベッタリ張りついてウットリ、陶酔状態の時もある。ニオイフェチなのだ。それも男性モノだけ。ワキ臭っぽい強い臭いに惹かれるようだ。そういう時は「変態!」と大きな声を出してやる。
ただし、何十匹も飼っている場合は事情が大きく異なり、さすがに臭うから大変らしい。以上はあくまで、数匹までの話である。
(峯田淳/コラムニスト)