生放送のワイドショーで突然起きる暴走は、もはや誰にも止めることができない。06年に「スーパーモーニング」(テレ朝系)に出演したやく氏が、「亀田三兄弟」の父・史郞氏に口撃を仕掛けた。当時は長男の興毅が疑惑判定でチャンピオンになった一方で、対戦相手に対する過度な挑発行為が問題視されていた時期だ。
やく氏はサングラスに胸のはだけたシャツ、派手なネックレスという出で立ちで登場。懐から金亀印のしつけ糸を取り出し、「これで、亀(興毅のこと)縛っとき」と先制パンチ。その後も「(興毅の試合を指して)やっすいドラマはいらん!」「ワシャ、今日、オッサン(史郎氏)の教育に来とるんや!」などと攻撃の手を緩めなかった。当の本人が〝意外な反応〟を振り返る。
「『こういうことをやるよ』とは誰にも言わず勢いのまま出ていきました。亀オヤジのリアクションは『ウケる』だろうと予想していたのですが、まさか怒るとは‥‥。ただし放送終了後も、プロデューサーに咎められたりはまったくなかったです」
ところで、政界にもたびたびブレーキの壊れたダンプカーのごとく、暴走者が現れる。政見放送で過激なパフォーマンスを見せた先駆けといえば、91年に都知事選に出馬した内田裕也だ。NHKの政見放送で冒頭5秒ほどは沈黙。満を持して「POWER TO THE PEOPLE」を歌い始めたのである。その後も延々と英語でスピーチしたかと思えば、また歌という構成。最後は尺が余ってしまい、沈黙に耐えきれず「よろしく!」と締めるのだった。
「当時、立候補の届けを出しに行くということで取材しました。裕也さんがマスコミを引き連れて行くと、係の方が『本人以外は入れません』と言うのですが、『オレがいいって言ってるんだからいいんだよ』って。こっちが困りました(笑)」(城下氏)
歌は歌でも歌詞が大問題に発展したのは、ビートたけしだ。92年の「FNSの日 1億2000万人の平成教育テレビ」(フジ系)で、深夜に亀有ブラザーズとして登場し、「Let it be」の替え歌で「♪ア○ピ~、ア○ピ~、イン○ンかと思ったらア○ピ~♪」と歌い上げ、局に抗議の電話が殺到した。
「歌詞は完全にアウトでしたが、歌い方がミュージシャン然としていて、ある種の感動のような雰囲気となったのが笑いのツボでした。間を持て余した玉置浩二までが『ウォウォウォ~♪』などと間奏でシャウトしていたのも、それを助長しました」(竹下氏)
交通事故は未然に防ぐ対策もできるが、放送事故ばかりは予測不能である。もしかして必要悪だったりして‥‥。