メキシコのバハ・カリフォルニア州の南にある浜辺で、2メートル級の生きたリュウグウノツカイが発見された――。
こんな驚きのニュースが英紙デイリー・メールなどで報じられたのは、今年1月20日だった。報道によれば、海辺でサーフィンをしていた若者たちが、浜辺に押し寄せた青色と銀色の体に赤いヒレを持つ魚を発見。尻尾の一部が傷がついていたため、サーフボードに乗せて海に戻したというのだが、これがまさにリュウグウノツカイだった。
リュウグウノツカイは深海魚であるため、生きたまま海面で目撃されるなど、ごく稀。地元では「災害が起こる前兆ではないか」との不安の声が上がっている。
というのも、リュウグウノツカイは「地球最後の日の魚」(Doomsday fish)と呼ばれ、その目撃は地震や津波の前兆とされるのだが、実はアメリカでは昨年、この魚の死骸が立て続けに発見されていた。
最初に死骸が見つかったのは、昨年8月。場所はサンディエゴのラホヤ・コーブビーチで、シュノーケリングを楽しんでいた観光客が見つけたのは、なんと体長3.6メートルにも及ぶ巨大なものだった。
翌9月、今度はサンディエゴの北にある、オレンジ郡ハンティントン・ビーチでも同様の死骸が発見される。さらに11月にも、サンディエゴ北部のグランドビュー・ビーチで、3メートルを超える死骸が、地元住民に発見された。この事態に、専門家の間では、地殻変動を懸念する声が出たのである。
CNNの報道によれば、カリフォルニアでリュウグウノツカイが発見されたのは、過去100年間でわずか22回。そう考えると、わずか4カ月の間に3回というのは驚くべき数だが、
「この魚は水深900メートルほどの深海に生息しており、生存が危ぶまれる時だけ深海から浮上すると言われています。そのため、古くから地震や津波の前兆現象ではないのかとの噂が広まることになったのです」
アメリカの非営利環境団体「海洋保護」では、2011年の東日本大震災発生時の前年に、日本の海岸でもリュウグウノツカイが「少なくとも12回発見された」と発表している。近年の研究によれば、この魚と地震や津波との間の相関関係を示すデータはないとされるが、一方で完全に否定するデータも存在しない。
「実際に阪神・淡路大震災前の1カ月ほど前には、徳島県南部の海岸一体でアオリイカが例年の10倍も捕獲されたり、震源地付近の淡路島岩屋では冬季にもかかわらず、ベラやグレなどの魚種が釣れたことがあった。
前兆現象説のもとになっているのは、地震直前に海底から出てくるガスや電磁波に深海魚が反応し、海面近くに逃れてくる、というものだ。
一部伝承では、もともと人魚だったリュウグウノツカイを人間が殺したことで地震が起こり、村が飲み込まれた、という話も残っている。
メキシコで生きたまま現れたリュウグウノツカイが、人間に残したいメッセージは何だったのか。
(ジョン・ドゥ)