1月13日夜に発生した、日向灘を震源とする最大震度5弱の地震の際、津波避難ビルに指定されている宮崎県延岡市の温浴施設が、避難者の受け入れを拒否していたことが判明した。この事実は16日、施設関係者への取材を通じて明らかになった。同施設の支配人は取材に対し、次のように答えている。
「市からの要請がないと受け入れられない、と判断していた。結果として避難者の方々にご不便と不安をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます」
津波避難ビルに指定された建物がこのような対応をとった事実は、災害時の避難計画に重大な課題があることを示している。
津波避難ビルが避難者の受け入れを拒否する例は、実際によく見られることなのか。この点について、昨年4月に発生した台湾東部の最大震度6強の大地震を引き合いに出して語るのは、台湾にほど近い沖縄県在住のジャーナリストだ。当時、津波警報(最大3メートル)が発令され、沖縄本島でも避難指示が出た。
「那覇市では高さや耐震性などの条件を満たす建物を、所有者と契約の上で津波避難ビルに指定しています。ですが沖縄本島の飲み屋街ではキャバクラやスナックが入る雑居ビルなどの高い建物が多く、これらのビルは夜間営業が中心。そのため、昼間に地震が発生した場合には開いておらず、避難できないケースが少なくありません。これでは避難者を受け入れるどころか、実際には機能しない『名ばかり避難ビル』となってしまいます」
今回の延岡市での事例や那覇市での現実を通じて浮き彫りになったのは、建物の運用態勢や管理者の認識不足が災害対策全体の大きな課題となっている、という現実。これが今後は行政と所有者の連携強化や、平時からの避難計画の見直しが求められるゆえんである。