熱心な野球ファンならば、ヤクルトの本拠地・神宮球場が「ダイナミック・プライシング」を導入していることは、すでにご存知だろう。
ダイナミック・プライシングとは、その日の需要や人気、販売状況、対戦カード、天候、曜日などの要素によって、チケット価格がリアルタイムで変動する仕組みだ。平日や悪天候が予想される日などは安くチケットを購入できるが、逆に休日や人気カードなどでは、通常よりも高くなることがある。
特にゴールデンウイークはシーズン中でも高騰しやすい時期であり、5月5日の「こどもの日」の広島戦の場合、ホーム、ビジター外野指定席はともに1万1500円になっている。まさかの1万円超えに、購入を断念した人がいることだろう。
だ今年はまだ、諦めるのは早いかもしれない。価格を決定する需要予測AIアルゴリズムの精度に、かなりのブレが発生しているのだ。
4月29日のDeNA戦は、ゴールデンウイークの始まりということもあり、AIは多数の来場者を予想。ホームの外野指定席には1万2000円の価格が設定された。ところが通常の週末よりも観客数は伸び悩み、売れ残ったチケットが15時30分から「ちょこっと応援チケット」として、わずか500円で販売されたのだ。試合途中からとはいえ、勝敗の行方はまだこの時点では決まっていなかった。
となれば、1万2000円を払った観客の胸中は複雑だ。試合途中からチケットを叩き売りするくらいなら最初から価格を安くしろ、と思ったのではないか。
どうやら需要予測のアルゴリズムは、「3000円のチケットを3人に販売するよりも、1万2000円のチケットを1人に販売して儲けよう」と判断しているようだ。その結果、スタンドのあちこちに空席ができてしまったのである。
この日は「TOKYO燕プロジェクト」の開催日で、入場者にはグリーンの燕パワーユニホームがプレゼントされた。500円で途中入場した人は大満足だっだろう。
ゴールデンウイーク後半、5月6日と6日の広島戦も強気の価格設定だが、フタを開けてみればガラガラの可能性もある。これからチケットを購入しようと考えている人は、ギリギリまで待てばさらに安くなるかもしれないが、売り切れてしまえばそれまで。なんとも悩ましいところで…。
(ケン高田)