だが、「平成の怪物」という異名をひっ提げ、鳴り物入りで入団した中田も、決して順風満帆だったわけではない。
1年目は屈辱の二軍スタート。ようやく開幕スタメンを勝ち取った3年目は思うような結果が残せず、すぐにファーム落ち。さらに直後に左膝半月板損傷を負うなど、失意のどん底へと突き落とされた。これまで語ることはなかったが、野球ができなくなる可能性すら頭をよぎったという。
〈このとき僕は真剣に“もう駄目かもしれない”と思っていました。ようやく一軍で開幕を迎えることができたのに、結果を出せずに故障。手術をすれば今年を棒に振ることになる。もう3年目だし、このままプロ野球生活が終わってしまうんじゃないか─本気でそう思っていたので手術も躊躇してしまったのです〉
1カ月近く迷った末に手術を決断。リハビリ中に自分の過去の試合を繰り返し見るうちに、中田は現在の
「がに股ノーステップ打法」につながる大きなヒントを得ることになった。中田本人がこの時期を「ターニングポイント」と意味づけるゆえんであろう。
一方、本書では、直接、相手が今回入籍した新妻であるとは書いていないものの、交際していた高校当時の同級生との思い出についても触れている。
〈自分で言うのもなんですが、相手の女子生徒はかわいい子で、女優の深田恭子さんに似ていました。確か、僕から告白したと思います。(中略)同じ桐蔭生だから、手紙を書いて下駄箱に入れたりとか、かわいいものでしたよ。学校から生駒山をバスで上がってグラウンドに向かっていたんですが、その車中で手紙をドキドキしながら開いたり。みんなには内緒にしていませんでしたから、こっそりというわけではなく、むしろ自慢していました。「俺の彼女、見てみろ」って〉
今回の電撃入籍を予感させるような心情も吐露している。子供を授かった時には「100%、親バカになる」と断言し、特に娘だった場合には振り回されることも覚悟しているという。
〈今のうちから、女の子ができて、「パパとお風呂に入るの、もう嫌や」って言われたらどうしようかなとか、なぜか、そういうイメージは湧いてきます。大きくなったら「パパの洗濯物とか一緒に洗わんといて」と言われるかもしれんぞ、とか想像しますね。
実際にそう言われたらすごくショックでしょうね。でも、娘に怒るんじゃなくて、洗濯機を2台買うんちゃうかなあ(笑)〉
大きな体を小さくして困り果てる中田の姿を想像すると、ほほえましい画が浮かんでくる。
中田の入団時に二軍監督を務めていた恩師の水上善雄氏は、初対面の時からその人間性と無限の可能性に魅せられてきた一人。本書の刊行に寄せて、こう話す。
「翔は私がこれまで数人にしか感じなかったオーラを持っていますし、野球選手としても、1人の人間としても4年間でここまで成長したのは凄いと思います。野球の面ではホームランや打点のシーズン記録など、『史上初』というものを成し遂げてもらいたい。また誰もが中田翔が好きと言ってもらえるような人間的に大きな、温かい選手になってほしい。そういうスーパースターになれる男です」
最高の後押しも得た今季、中田はプロ野球界の主役へと飛翔するはずだ。
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