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大映ドラマのヒロインたち 極端なセリフもマジメに演じた

「過酷な運命」をたどるのは、大映ドラマの必須条件である。南野陽子がヒロインを務めた「アリエスの乙女たち」は、その清らかなタイトルと裏腹に、波状攻撃で困難が押し寄せた。それは、うら若き一人の女優を、足元から揺さぶるほどの過酷さだった─。

「いいかい、大映ドラマって“演劇部”みたいなものだから。今回はこういう出し物だというなら、それに沿って演じていけばいい」
80年代の大映ドラマを支えた座長格の松村雄基は、一座の“新参者”である南野陽子(44)にアドバイスした。その言葉には「裏」も「表」も込められていたが、南野の中には1つの決意があった。
「それまで大映ドラマに出た方々が、バラエティ番組に出ると『あのセリフはないよね、こんな人いないよね』とかおっしゃるたび、その言い方に違和感があるなと思ったんです。どんな極端なセリフだったとしても、私は出演する以上、大マジメに演じようと思いました」
 その一途さは、デビューから今まで変わらない南野のモットーである。時にカメラマンと衝突することがあっても、目の前の仕事と真剣に向き合ってきた。
 南野の名を全国区にした
「スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説」(85年11月~/フジテレビ)の主演・麻宮サキは、幼い頃から仮面をつけたままの生活という設定。そんな荒唐無稽さをも「バカにしないこと」が南野の考えである。
 そんなひたむきさが同作をヒットさせ、南野をトップアイドルに押し上げた。
決めセリフの「おまんら、許さんぜよ!」は、夏目雅子主演で大ヒットした「鬼龍院花子の生涯」(84年/東映)の「ナメたらいかんぜよ!」からヒントを得たものである。
 1年にわたったオンエアが終わり、半年のインターバルを経て取り組んだのが
「アリエスの乙女たち」(87年4月~/フジテレビ)だった。前作の30分から1時間に、制作は東映から大映テレビに変わった。原作は「週刊少女フレンド」に連載されていた里中満智子のマンガである。
「私は里中作品のファンで、特に『ミニスカートはいやよ』という短編を読んで以来、私の生涯にわたるロングスカート好きが始まったほどですから」
 里中作品のいくつかの候補から「アリエス─」が選ばれた。舞台は私立の名門・仰星高校。南野扮する水穂薫はパリからの帰国子女として転校してきた。そして愛馬・エレクトラに乗り、馬術部に颯爽と現れる。その実力は、たちまち大会の選手に抜擢され、校 内でも何かと注目されるようになる。
 乗馬シーンもふんだんにあったが、もともと南野は体が弱く、「スケバン刑事」の派手なアクションも苦難続きだったが─、
「この撮影で乗馬を習わせてもらったので、普通に乗って走るのは大丈夫でした。ただ、障害物を飛んだりするシーンでは、馬がレフ板の光を怖がったりするので、それが大変でしたね」
 さらに同ドラマには「スケバン刑事」で共演した
「ビー玉のお京」こと相楽ハル子がいた。旧知の仲がいることで、最初は学園生活のようだと思った。ただし、やがて心身ともに削られていくのは「大映ドラマ」の必然である‥‥。

この続きは全国のコンビニ、書店で発売中の『週刊アサヒ芸能』でお楽しみ下さい。

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