5月3日に京都で行われる伝統の一戦「天皇賞・春」。GI馬3頭のほか、実績馬が顔をそろえる中、万券王・水戸は62年ぶりの牝馬Vがあるとにらむ。一方、5月10日に東京で行われる「NHKマイルC」は、大混戦の様相。
GWのただ中に行われる天皇賞・春。今回はどんなドラマが生まれるのだろうか。当初は宝塚記念まで待機、自重すると見られていたゴールドシップが、相性のよい横山典騎手とのコンビで参戦。この古豪の出走でレースに厚みが増すことは明らかだ。しかし、目下このレースを連勝中のフェノーメノと、1番人気に支持されそうなダービー馬キズナを加え、GI馬は3頭。例年に比べ、顔ぶれが少々寂しいのは否めまい。
それでも、この実力派以下、人気、有力どころは近走の成績、内容がよく、熱のこもった見応え満点の競馬になること請け合いだ。
その有力どころを見てみると、過去の実績から力量のほどは紙一重と思え、目移りしてしかたがない。それに前述のGI馬3頭とも全幅の信頼は置きづらい。キズナは、血統(母系)、気性などから判断してステイヤーとは言いがたい。ゴールドシップは、阪神は〈6 1 0 0〉とパーフェクトなのに対し、京都は〈1 0 0 3〉と取りこぼしが多いのは気になるところ。それにフェノーメノは、昨春の天皇賞を勝って以降、この馬らしい走りができておらず、ピークを過ぎたのではと見られてもいる。それだけに波乱の予感がしなくはない。
実際、過去10年、1番人気で連対を果たしたのは06年の勝ち馬ディープインパクトただ1頭。2番人気で勝ったのが3頭(07年メイショウサムソン、10年ジャガーメイル、13年フェノーメノ)。馬単で万馬券になったのは半分の5回を数える。これはもう穴党の出番と言っていいだろう。
データをひもといてみると、これからピークを迎える4歳馬の活躍が最も目立ち、続いて充実の5歳馬。年齢がかさむごとに成績は落ちていく。であればアドマイヤデウス、サウンズオブアースの両4歳馬は、嫌でも注目せざるをえなくなるが、穴党としては、こうしたデータに逆らってみようかと思う。GI馬3頭は、それぞれ不安材料を抱えており、波乱の目は十分あると見たからだ。
狙ってみたいのはフーラブライドだ。ピークを過ぎたと見られている6歳、それも天皇賞・春に限って見れば1953年に優勝したレダ以降、連対を果たしたことさえない牝馬。無謀な狙いと奇異の念を抱かれてもやむをえないところだ。 しかし断じて軽く見るべきではない。厩舎関係者が「今が充実期。暖かくなって調子のほうもグングンとよくなっている」と、口をそろえて状態のよさを強調するほど。年齢的衰えはこれっぽっちもない。実際、先々週の追い切りでは稽古駆けするパートナーを馬なりでアオッていた。
前走の阪神大賞典はゴールドシップに手もなくひねられたが、馬体に余裕(前々走比8キロ増の体重)があり、ために道中折り合いを欠く場面もあった。「馬場も悪く、この馬の力は出していない」(木原調教師)のであれば、あらためて注目すべきである。
人気の一角、アドマイヤデウスとは、前々走の日経新春杯で互角の勝負を演じている。今回の舞台は淀の3200メートル。「直線の長い京都の長丁場は間違いなく合っている」と、木原師ほか、関係者が強調するように、息の長い末脚を武器にしている馬。
母の父は、ゴールドシップと同じメジロマックイーン(天皇賞・春を連覇)。そして曾祖母は春の盾2着があるランニングフリー(日経賞など重賞3勝)の全妹。血統的背景からも、京都の長丁場はドンとこいのクチだろう。
有力どころの足をすくうのは、この馬だ。
◆アサヒ芸能4/27発売(5/7.14合併号)より