今週は「函館2歳S」が行われるが、デビュー間もない2歳馬で不確定要素が多いだけに難解な一戦だ。一方、さらに難解なのが「中京記念」。7年連続で2桁人気馬が激走し、3連単の最低配当が23万円。大荒れ傾向の重賞だ。
函館夏の陣、締めの一番は函館2歳Sだ。これまでを振り返ってみるとアンブロワーズ、ローレルゲレイロ(2着)など、その後、短中距離で活躍した馬は散見できるが、クラシック戦線に乗って注目されるような大物は少ない。言ってみれば、これで完結した2歳重賞と、捉えていいのだろう。
また、性別による斤量差はない。まだこの時期、牡牝による能力差はないということで、54キロで統一されてからの14年間で8回も牝馬が優勝。2着も7回を数える。そして、デビュー間もないことで不確定要素が多く、馬単導入後の13年間で4回の馬単万馬券が飛び出している。1、2番人気ですんなり決まったこともあるが、1番人気馬が過去13年で勝ったのはわずか2回(2番人気馬は3勝)。順当な決着は少ないと見るべきだろう。
それからジャングルポケットやバゴなど、父親がステイヤー産駒の勝ち馬もいるが、それらは母系がスピード色の濃いことが共通しており、勝ち馬は、おおむね短距離系、あるいは短中距離系種牡馬というのが特徴。そのへんも頭に入れておくべきか。
以上の視点を持って、勝ち馬検討に入ってみよう。
特に抜けて人気になるような派手な勝ちっぷりを見せた馬は見当たらず、それだけ今回は難しいと言えるが、それでも穴党としてイチオシしたい馬がいる。狙いは、アルマククナだ。
デビュー戦は、函館開幕日。傷んでいない芝1000メートルでの58秒0は、特に強調できる速い走破タイムではない。体も412キロと小柄。よって評価は低い。が、好スタートを切り、終始3番手の好位を楽に追走。直線半ばで難なく抜け出しての快勝劇だった。しかも末脚は鋭く、とにかくセンスのよさが光ったレースぶりだった。
デビュー戦からこのように味のある競馬をする馬は少ない。粗削りなところがなく、印象とは違って秘めた能力はかなり高いと判断した。それは小兵ながら、あか抜けてバランスの取れた好馬体からもわかることだ。今回は小回り函館での6ハロン戦だけに、器用で上手な立ち回りを見せる馬は、それが大きな武器でアドバンテージになるはずだ。
それにも増して状態がいい。1カ月以上間があいたものの、しっかりと乗り込み、動き自体も実にリズミカル。力強さも感じられ、一度使われたことでかなり良化していることは確かなようだ。
「実にいい感じで来ている。この分なら楽しみはある」
今春から厩舎開業した中舘調教師は、こう期待感たっぷりに語るが、百戦錬磨の名ジョッキーだった同師はまた、「思っていた以上に強い馬。マイルぐらいまでなら距離ももつ」とも話している。
前述して強調した牝馬でもあり、軽く見るのは断じて禁物だ。
もう1つ強調したいのは母の父がステイゴールドということ。一昨年の覇者クリスマスの父親でもあるが、3冠馬オルフェーヴルほか活躍馬を多く出し、一時代を築いたファン周知の名馬。種牡馬でこれだけ成功した以上、ブルードメアサイヤー(母の父)としても大いに注目すべきなのだ。
また、母系そのものも良質だ。ローマンエンパイア(GIII京成杯)など近親、一族に活躍馬は少なくない。多少の道悪なら不安はないが、良馬場条件に大きく狙ってみたい。
相手の筆頭としてあげたいのは、マコトルーメンだ。昨年の函館2歳Sで12着に敗れたマコトダッソーの全弟だが、強烈な末脚を武器にした兄以上の器。横山典騎手とのコンビも魅力で、大勢逆転があってもおかしくない。
◆アサヒ芸能7/21発売(7/30号)より