今週は春の女王決定戦「ヴィクトリアマイル」が東京で行われる。14年は11番人気がV、13年は12番人気が2着、12年は4番人気と7番人気で決着し、過去3年は馬単万馬券の波乱含みの一戦。はたして今年も大荒れなるか。
創設されてからわずか10年。歴史は浅いが、歴代の勝ち馬の中には、その活躍から「女傑」とうたわれた馬が何頭かいる。今年はどんなドラマが誕生するのか、興味が尽きない。
現有勢力ではハープスター(先週引退を表明)と、ラキシスの名がないくらいか。そのハープスターと最優秀3歳牝馬の座を争ったヌーヴォレコルトが圧倒的な評価を得て中心視されている。このヌーヴォは、ラキシスとエリザベス女王杯で大接戦を演じている。であるなら、この馬を下馬評どおり主力に置いて馬券的には“2着探し”と見るべきなのだろうか。馬券の筋からすれば、確かにそうだ。
今季のスタートとなった前走の中山記念からして強かった。皐月賞馬ロゴタイプをねじ伏せての勝利は、昨秋からさらにパワーアップしている印象を与えたものだ。この勝利のあとは、ここ1本に備え短期放牧でリフレッシュ。じっくりと調整してきただけあって、斎藤調教師はじめ厩舎スタッフは「また一段と良化。すばらしい状態にある」と、胸を張るほどだ。
なら、この馬で“絶対”か。重箱の隅を楊枝でつつくようなささいなことかもしれないが、ちょっぴり不安材料もなくはない。
「妙にピリピリしている」のだという。これは2週前の追い切りを控えての厩舎関係者の弁。そしてその際の稽古は予定していたより軽かったのだ。これは見た目の印象だったが、その時の馬体はスカッとして締まりがよく、もう明日でも走れそうな感じだった。
もともと気性が勝った馬で仕上がり早。調整過程に誤算が生じたのでは‥‥と勘ぐりたくもなるのだ。蓋を開けたら、体重減があってイレ込んで“2走目のポカ”を演じないともかぎらないではないか。
いずれにしても穴党としては、この本命馬から入るわけにはいかない。
ざっと見渡して、他の有力どころは全幅の信頼を寄せきれない。目下3年連続して馬単で万馬券になっており、波乱の目はなくはない。今年も‥‥と期待してイチオシしたいのがベルルミエールだ。
過去9年を振り返ってわかることは、4歳馬が圧倒的に強く(6勝2着7回)、好成績を収めている点だ。ベルルミエールも生きのいい明け4歳馬。前哨戦の阪神牝馬Sでクビ差2着と頑張り、勢いに乗っての挑戦。大いにチャンスありと見ての狙いだが、意外や人気がない。
7ハロンがベストと見られ、マイル戦に勝ち鞍がないからだろう。しかし、力をつける前、昨年のニュージーランドTでは大外枠の不利をはねのけて、差のない3着にふんばっていたのを忘れてはいけない。その後のNHKマイルC(今回と同じ舞台)で12着と敗れたことでマイル戦は長いと見られたようだが、これはもう調子のピークを過ぎていたまで。前々走の京都牝馬Sは、休み明けで重め残り。だから今回あらためて距離の適性を問うべきなのだ。
確かに父は短距離血統だが、母の父はご存じサンデーサイレンスで、曾祖母の父ソーマレズは凱旋門賞を勝ったステイヤー。マイル戦は十分に守備範囲と見ていいのではないか。そればかりか、マビッシュ(GI4勝、英・仏2歳女王)を近親に、ミゼット(現GI5勝に該当)を曾祖母に持つ良血。ポテンシャルの高さは推して知れよう。
1週前の追い切りは文句なし。上り調子にある今なら勝機十分と見ていい。
“一発”があるとすれば、ハナズゴールだ。豪州でGIを制したのは周知だろうが、「ようやく本来の姿に戻ってきた」(加藤和師)なら軽視は禁物。この馬の末脚は天下一品。良馬場条件に1票投じたい。
◆アサヒ芸能5/12発売(5/21合併号)より