1月18日、突如、記者団の前で、橋下徹市長が打ち出した「あいりん特区」構想。日本で最大の日雇い労働者の街に子育て世代を呼び込むため、固定資産税や市民税を一定期間免除する構想を明らかにしたのだ。だが、あまりにも唐突な発言に、その実現性を疑問視する声も根強い。はたして、橋下市長の真意は何なのか――。
「西成区をえこひいきする」
1月18日、橋下徹市長(42)の記者会見の席での発言に大阪市職員は誰もが耳を疑った。市の担当者に相談もなく、トップダウンで市改革のプランがマスコミの前で初めて明らかになることは、これまでにも何度かあった。
しかし、今回ばかりは、大阪市南部に位置する西成区の一部地域を、税金などを免除する「特区」に指定。新たに人口が転入するように今後、働きかけるというのだ。
市政担当記者が語る。
「特区構想の中身は、大阪府外から転入する小中学生がいる子育て世帯を対象に、住宅の固定資産税や住民税を一定期間免除するというもの。また、市立の小中学校に通学する世帯への所得制限付きの助成や、学校・保育施設の充実のための予算も他区に比べて優遇し、市職員の集中配備で、生活環境の改善に取り組み、露天や簡易宿泊所への規制強化も検討するとしています」
突然の「西成ひいき」宣言だが、橋下市長の鼻息は荒い。
「西成を変えることが大阪を変える第一歩」
さながら、市政改革の“本丸”とも言える発言の裏には、橋下市長が掲げている「大阪都構想」の試金石とも言える狙いがあるのだ。
社会部記者が語る。
「橋下さんは、昨年11月の大阪W選挙の直前に、平松邦夫前市長と公開討論を行ったことがあった。その際に、平松前市長が最初に切り出したのが、あいりん地区の失業者と生活保護者増加など4項目の問題だった。すると橋下さんは『大阪の起死回生のためには、府と市を解体して広域行政と基礎自治体を整理することだ』と持論を展開。最終的には、二重行政の解消こそが、あいりん地区問題解消につながるとの見解を示した。いわば、今回の『あいりん特区構想』を『大阪都構想』の突破口としたい意気込みがうかがえます」
さらに大阪都構想への第一歩として注目されていた「区長公募」についても、当初応募者数が少ないと言われていたが、蓋を開ければ、1460人もの最終応募の結果となった。橋下市長への“追い風”もまた、異例の「あいりん特区構想」に結び付いたと言えよう。
前出・社会部記者が続ける。
「橋下さんの構想の中には、すでに15年4月の大阪都の区割りの問題も念頭にあるんです。現在、24ある区は、大阪都になることで、8~9に区割りされ再編される。その時に、生活保護と失業者が多い西成区をどこの区割りが引き受けるかということもある。そこで、税の減免などの『えこひいき政策』で財政的な支援が担保されれば、区割りもスムーズにいくことになる」
つまり、大阪都構想の成否を進めていくうえでも、あいりん地区対策は、避けられない行政上の問題と言えよう。