これは「春の珍事」ではなかったのかも──。横浜DeNAの「意外な」快進撃である。覚醒した4番を軸に打線が機能し、大抜擢した新人守護神はフル回転。だが、好事魔多し。ズバッと当たる采配とは裏腹の「ドロドロ内紛」が、絶好調男を悩ませているのだ。
4月下旬から連勝を重ね、5月5日には単独首位に立ち、勢いをキープ。誰もが予想しなかった横浜DeNAの絶好調ぶりは、4年目の指揮を執る絶好調男・中畑清監督(61)の選手操縦法が奏功しているという。スポーツライターが語る。
「5月8日の巨人戦で序盤に打ち込まれて降板した井納翔一(29)をコキ下ろしましたが、コーチ陣の目の前で本人を叱りつけるのが中畑監督のやり方です。今季は主力の筒香嘉智(23)や梶谷隆幸(26)に対し、報道陣の前で何度も苦言を呈している。ただし、そこからはい上がってこいというメッセージが込められているので、誰も陰で文句を言っていません」
球団新人投手の月間最多セーブ記録を更新するなど、すでに16セーブをあげている(5月15日現在)ルーキー・山崎康晃(22)を守護神に大抜擢した眼力も見逃せない。
「もともと先発で起用する予定でしたが、抑えの短いイニングで集中力が増し、球速も5キロアップ。首脳陣からは反対意見も出たものの、監督は自分の考えを押し通した。最初は『ギャンブル采配』と呼ばれ、あるOB評論家などは『絶対に失敗する。危険だ』と中畑監督に警告していました。今は恥ずかしいからか、解説の仕事で球場に来ても顔を見せませんね。中畑監督は『来ねぇよ』と笑っていました」(球団関係者)
巨人の内部からは「あれが出てきたらアウト。手がつけられないよ」との嘆きばかりか、「悔しいけど、あの(大抜擢の)思い切りは、原監督にはできない」と、うらやむ声も出ているという。
かねてから懸念されていた「監督力」も問題解決。スポーツ紙デスクによれば、
「雰囲気で野球をやっていますから。コーチがデータをもとに進言すると『それは勢いだから』などと言って、恩師であるミスター譲りのカンピュータ采配に走ろうとする。今季は進藤達哉ヘッドコーチ(45)が監督の暴走を止める役割も担っているわけですが、中畑監督は作戦を進藤ヘッドに一任するなど、あまり口出ししなくなっています」
それが結果につながっている、というのである。さらに、他にもこんな皮肉な面が。
昨年10月、DeNAは投手11人を大量解雇した。当然、トライアウトに参加する選手もいたが、
「他球団のスタッフが『こんなに大量にクビにして、コーチ陣は何をやってたんだ?』と疑問を口にしていました。結局、投手の育成がうまくいかないことで、DeNAは野手力を固めることにした。それが今年、打撃のチームになっている理由の一つです」(球団関係者)
防御率3.34はセ・リーグ5位だが、総得点158と本塁打30はリーグトップ、2割6分4厘のチーム打率は中日に次ぐ2位。打撃10傑には5人も入っている(いずれも5月15日現在)。98年に日本一になった時の「マシンガン打線」を彷彿させるような‥‥。