ところで、百田氏の「潰さなあかん」発言問題は、その言葉を導いたとされる自民党の当該議員に処分が下ったことで、騒動はいったん幕引きかと思われた。が、懇話会から5日後の6月30日に、再び大西議員が、
「一部マスコミは懲らしめなければいけない」
「誤った報道をするマスコミに対し、(企業は)広告を自粛すべきだ」
と、大放言したことなどで「言論圧力」問題へと飛び火。麻生太郎副総理兼財務相が、「発言で法案審議が遅れたら何の意味もない」と口をとがらすなど「身内割れ」事態に発展している。
「今後、安保関連法案は7月10日の集中審議を経て、15日には採決に踏み切る予定です。野党は“違憲性”で阻止する構えだが、それ以前に『言論の自由』を脅かす自民党の体質そのものが、野党にとっては格好の攻撃材料となる」(政治部記者)
火消しに後手に回った自民党に対しても、「二十一世紀書院」代表の蜷川氏が「活」を入れる。
「言論の自由には批判される自由もある。自民党寄りの新聞だけあればいいかと言えばそんなことはないはず。どちらかが一方的に悪いということはなかなかきめつけられない。それなのに、自民党の懇話会で参加者が全員賛同するような形で、反政府的な新聞は経団連に圧力をかけて広告をなくせというのでは、右翼・民族派の立場でも賛同できない。自民党のおごりに他ならない。
目下、最重要な『安保論議』の中で、今こそ日米安保に詳しい学者や憲法学者などを呼んで勉強会を開けば、一般の人も『自民党も一生懸命やっている』と納得するはずです。失礼ながら、いまさら安倍総理応援団の百田氏を呼んでも似たもの同士の馴れ合いにすぎず、特別に斬新さはない。それどころか、この一件で大事な法案を通すどころか足を引っ張りかねない」
7月3日になって、安倍総理が、「最終的には私に責任がある。沖縄の皆さんの気持ちを傷つけるとすれば、申し訳ない」と、陳謝する事態となったが、最後に、「民族革新会議」議長の犬塚博英氏が、今後を憂慮してこう話す。
「百田氏の『永遠の0』を読んで感動したが、NHKの経営委員になっても騒動を起こしたり、思い込みが激しいというか、『ド素人』そのものだよ。沖縄の本土復帰、天皇行幸の実現を見てきた我々からすれば、もちろん沖縄の戦後が終わったわけではないが、本土と沖縄が対立関係にある今の状況が残念でならない」
舌禍で国論を揺さぶる騒動を起こし続ける百田氏。このままでは自著「海賊と呼ばれた男」もヒットしたのに、“国賊”に成り下がってしまいかねない──。