今回もa-nationの大トリを務めた浜崎あゆみは、ガラガラのアリーナを前にして何を想いながら歌っていたのだろうか。テレビの生中継で上空から映し出されたアリーナは、半分も埋まっていなかったのである。
8月30日に東京・味の素スタジアムで開催されたa-nation 2015 stadium fes.。大阪と東京を合わせて4公演行われたなかの最終公演で、その大トリは今年も浜崎あゆみが務めてみせたが、空席祭りの予兆は休憩のときにすでに始まっていたという。現地に赴いた音楽ライターがその様子を語る。
「前半のラストに登場したAcid Black Cherryのときは、Team ABCと呼ばれるファンを中心に会場が大いに盛り上がっていました。そんな彼らの出番が終わって休憩になると、早くも一部の観客がぞろぞろと帰りだしたんです。天気も雨まじりでしたし、後半のアーティストには興味がない層も多かったのかもしれません」
その後半には、EXO(エクソ)が登場。日本上陸が待たれていた韓流アイドル最後の大物グループだ。その彼らから日本での1stシングルリリースが発表された瞬間には、おそらくこの日一番の歓声があがっていた。そのEXOの出番が終わるや否や、休憩時を上回る観客が席を立ち始めた。残るTRFや浜崎あゆみには目もくれず、である。
そして肝心の浜崎あゆみ。ボディスーツをまとった全身をチェーンで縛られた姿に変身するイリュージョンや、いまやおなじみとなった山車に乗っての場内一周など、浜崎らしい大掛かりな仕掛けを次々と繰り出す。だが観客の反応は乏しく、家路を急ぐ観客の姿はライブ終了まで途切れることがなかった。前出のライターが続ける。
「あゆが鎖で縛られたシーンでは、観客から『ボンレスハムかよ』の声も。山車で一周する見せ場も以前のあゆなら観客が熱狂したものですが、今回はアリーナの空席が目立つせいか痛々しい空気が流れていました」
この日の最高気温は22度と、猛暑だった8月とは思えないほどの冷気がスタジアムに充満していた。もっとも冷めていたのは空気ではなく、あゆを見るファンの目のほうだったかもしれない。
(金田麻有)