ところが、前代未聞の一大プロモーションを展開しても、観客動員は予想どおり大苦戦。ライブ3日前の8月19日には、なんと1枚1万5000円のチケットが、「ヤフーオークション」で3枚121円という振り込み手数料にも満たない額で落札されたことが発覚した。時を同じくして「ライブモニター」なる、車で来ればチケット代も駐車場も無料になるという、いわば“サクラ”まで募集していたのだ。これでは、高額の正規料金を払ってライブを楽しみにしていた純粋なファンはたまらないだろう。
こうした紆余曲折を経て、みずから「伝説」と語る富士山麓ライブは本番当日を迎えたわけだが‥‥。
「ライブの模様を掲載したスポーツ紙の記事は一様に主催者発表の“10万人”という数字を強調していましたが、動員されたサクラを含めても、いいところ7万人前後だったというのが現場での実感です」(音楽業界関係者)
しかも、当日の会場はハプニングの連続だった。
オープニングからカリスマの降臨とばかりに、ヘリコプターでド派手にステージ登場を果たした長渕だったが、勢いがありすぎたのか、乗っていたヘリコプターの風圧で救護用テントが倒れ、看護師の女性2人が負傷したのだ。
先の参加者は、ライブ会場の様子をあきれ顔でこう振り返る。
「長丁場だから飲食を販売する屋台はたくさん出ていた。それでも、人気の高いご当地の富士宮やきそばを提供する屋台なんかは早々に品切れになっちゃって、長渕のイメージにはそぐわないタイ料理とかの店が、かろうじて遅くまで営業しているような感じでね‥‥。そもそも、3回の休憩にそれぞれ1時間近くも取るくらいなら、その分、セットリストを詰めればいいんじゃないかと思った。途中に出演したゲストも沖縄出身の新人歌手だったり、ラッパーだったり、一般的にはほとんど無名に近い人たちで、古参のファンからは『何で出てくんだ?』とブーイングが出てたね。まあ、ひと言で言えば“苦行”だった(笑)」
ライブが終了すればしたで、退場規制が実施された。参加者は「ア」行、「カ」行などリストバンドに記された文字に従って順番で退路につく形だったが、午前6時30分にはステージが終了したにもかかわらず、1時間半ごとに規制解除がなされていくため、最後の退場者がゲートを出たのは、なんと9時間後の午後3時20分! “帰宅困難者”が続出し、半ばやけっぱちでそのままピクニックを開始するファンもいたという。