ある意味では「伝説」となった今回のライブだが、こうした自己愛が見え隠れする傍若無人なふるまいはまさに長渕の真骨頂。過去のライブでもいかんなく発揮されていたようだ。
くしくも長渕は、一大イベント開催の経緯に関して、
「命をかけて何をやっていくのかを考えた時、震災や福島の原発などを抱えながら生きていく。そういうことが今回の富士開催に挑むきっかけになっています」
と話していたが、かつて復興支援の舞台裏でも今回に勝るとも劣らない俺様ぶりで周囲を困惑させていたという。
震災からちょうど1年後の12年3月11日に放送された「報道ステーション」(テレビ朝日系)で長渕は、メインキャスターの古舘伊知郎とともに被災地を訪問。震災を受けて作ったというアルバム収録曲「愛おしき死者たちよ」を熱唱してみせたが、同局関係者は絶対匿名を条件にこう明かす。
「もちろん、長渕さんが被災者を勇気づける目的で被災地を訪問したのは間違いないと思う。ただ、その思いがテンションを高めすぎたのでしょう。実は長渕さんが現地を訪問するにあたり、『報ステ』のスタッフにいきなり『小屋を建てろ!』と言いだしたんです。要は、自分たちの待機所を用意しろということなんでしょうけど、震災から1年が経過したとはいえ、まだ住居での苦労も多い被災者たちのことを考えると、番組のためだけに小屋を建てるというわけにはいかない。おそるおそる番組スタッフが『無理です』と却下すると、あろうことか長渕さんサイドが単独で現地に小屋を建てたんですよ」
さらに、長渕のボルテージは高まる一方だったようだ。
「大がかりな炊き出しをやるため、東京から寿司職人を連れて行くと言いだし、『米を200キロ用意しろ!』と気勢を上げたんです。結局、現地の状況もあって、炊き出しを行うことができず、寿司職人が寿司ではなく大量のおにぎりを握って、スタッフだけがそのおにぎりを食べるという、何ともカオスな状況になりました」(前出・テレ朝関係者)
男らしくリーダーシップを取ろうとすると、どうにも空回りが目立つが、芸能評論家の平田昇二氏は語る。
「カリスマと呼ばれる人たちは得てして、よく言えば個性が強く、自己愛が強い人種なわけですが、長渕さんの場合は度を超しているように見えます。だから信者以外の人たちには、ついて行けない部分もありますが、その不器用さもまた、ファンのハートをくすぐる要因なのかもしれません」
「俺は俺で在り続けたい」という「とんぼ」の歌詞を地で行くマイペースぶりで周囲を混乱させ続ける長渕は、いったいどこへ飛んでいくのだろうか──。