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70年代シネマ女優たち 原田美枝子

 74年にスクリーンに登場した原田美枝子は、やがて、数々の栄誉に輝く大女優となった。同時期に台頭した新進の女優たちと同じく、奔放な個性を押しとどめることなく現在までキャリアを重ねている。その出発点において、原田の恵まれた肢体は女優としての大きな武器となった。

大きく揺れ動く「巨大な乳房」
「70年代は〝エリカ様〟が5人や6人は存在したと思います」
 つい最近、「映画秘宝」の取材で原田美枝子(53)は、自身を含めて楽しげに表現した。原田だけでなく桃井かおり、秋吉久美子、大竹しのぶら十代の女優たちが堂々と自己を主張していた時代、それはまさしく日本映画の〈輝ける夏〉だったかもしれない。
 この7月に公開される沢尻エリカの主演復帰作「ヘルタースケルター」(アスミック・エース)には、原田や桃井も共演している。はたして「70年代のエリカ様たち」を迎え撃つ沢尻は、堂々と伍することができるだろうか‥‥。
 75年の夏、第1次の長嶋巨人が最下位にあえいだ季節に、中2だった筆者は「恋は緑の風の中」(74年/東宝)という映画を観た。地方の三番館ゆえに本来の公開からは半年以上も経過していたが、それは「性教育映画」という不思議なふれこみだった。
 主人公である中2の少年・純一(佐藤佑介)は、第二次性徴期を迎え、悶々とした日々を送る。映画のポスターにはこんなコピーが添えられた。
〈制服の中で僕の性が爆発しそうなんだ!〉
 それは役の設定と同学年である筆者にリアルに響いた。そんな純一少年が想いを寄せるクラスメート・雪子が原田の役どころ。真ん中から分けた長い黒髪が印象的で、整ってはいるが愛嬌のある顔立ちも魅力的だった。
 ストーリー自体は他愛ないものだったが、驚かされたのは少年の夢想シーンである。森の中で原田を必死に追いかけるのだが、ここで原田の羽衣のようなワンピースがはだけ、胸もとがあらわになる。走っているせいもあり、その巨大な乳房は大きく揺れ動く──。
 撮影時、15歳だった原田美枝子の早熟な肢体は、衝撃を持って迎えられた。現在までDVDはおろか、VHSにもなっていない幻の映画だが、あの日の「原田美枝子という記憶」は今も色あせずに残っている。
 これが劇場公開作としてはデビューにあたるが、実はそれ以前にテストの形で一歩を踏み出している。全国の学校を回って上映される児童映画「ともだち」(74年/日活)というタイトル。監督は松田優作のアクション映画で名をはせた澤田幸弘である。
「主人公の男子児童のお姉さん役が決まらなくて、当時の人気アイドルだった桜田淳子にお願いしてみようとなったんですよ。彼女が所属するサンミュージックに打診したら『桜田を超える期待の新人がいます』と言われたんです」
 それが中学3年生の原田である。澤田は面接をしてみると、原田が白い服を着ていたせいもあるが、まるで「羽の生えた天使」に見えた。もちろん、その場ですぐに姉の役を決めた。
 意外にも原田はアイドル歌手志望だったそうだが、澤田は「素直にセリフを言ってさえくれれば」と思った。
「演技力うんぬんじゃなく、最初に会ったイメージがすべて。まだあどけなかったけど、とにかく光っていたよね。撮影が終わって最後に『歌手になれるよう頑張ってね』と言ったら、大きな声で『はい!』と返事したのを憶えています」
 同作品には、のちに盟友となる松田優作も出演している。そして原田は歌手になることはなく、本格派の女優を目指す旅に出た。

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