帝国データバンクによると、映画誌「SCREEN」を発行するケーイー(旧・近代映画社)が10月2日、東京地裁から破産手続き開始決定を受けた。前日の10月1日に近代映画社がケーイーに商号を変更し、「SCREEN」「SCREEN+」「BIG ONE GIRLS」の3誌はタイヘイグループのティ・アイ・ティに譲渡。同日付でティ・アイ・ティが新・近代映画社となり、3誌の出版を続けることとなった。負債額は約9億5000万円にものぼる。
旧・近代映画社公式サイトには「ご迷惑をおかけします。只今ホームページは工事中です」との記述が。同社のオンラインストアは在庫ゼロ、注文ストップの状況が続いている。公式ツイッターは9月30日で更新がストップしたままだ。
旧・近代映画社は戦後間もない1945年10月に創業。翌年5月に「スクリーン」(のちの「SCREEN」)を創刊した映画誌専門出版社である。全盛期の頃は「近代映画」(後の「Kindai」)で「平凡」「明星」に対抗したり、アイドルや俳優の写真集やムック、映画・芸能関係の関連書籍を出版していた。
「今年9月には『SCREEN通巻1000号』を達成したばかり。後発のライバル映画雑誌『ロードショー』が7年前に廃刊になってもなお頑張っていた。洋画ファンのための老舗雑誌だったのに」(芸能ライター)
ベテラン映画ライターも言う。
「世界の映画スターがカラーグラビアにてんこ盛り、艶然と微笑んでいる雑誌なんて他にはなかった。故・淀川長治さんや故・小森和子さんによる映画紹介や、全公開作品を網羅した故・双葉十三郎さんの連載『ぼくの採点表』は、地方に住む映画ファンにとっては必読ページだった。アラン・ドロン、カトリーヌ・ドヌーブに代表される美男美女の俳優ブーム、スティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス監督が巻き起こしたエンターテイメント映画ブーム、ブラッド・ピット、トム・クルーズ、ジョニー・デップらハリウッドスターブームが続いたが、今は品切れ状態。長らく洋画のファン離れが続いており、邦高洋低は覆せないままです」
インターネットが普及し、スター自らが情報を発信、パパラッチがスキャンダルを暴き出す時代に。映画評論の必要性を感じない若者が増え、映画館に足を運ばない人も少なくない。
「『SCREEN』に続く状況に置かれている雑誌はいくらでもある。韓流ブームが去って、韓流関係の雑誌は総倒れ。旅行ガイドブックも毎年新しいものを出すが、ネット情報の新しさにはかなわない。広告が入るから成り立っているような、綱渡りの状態が続いている」(出版関係者)
映画も雑誌も取り巻く状況は一段と過酷になっているのだ。
(塩勢知央)