セ・リーグ2強と言われた巨人と阪神がそろってV逸し、監督交代劇がクローズアップされている。片や球団を牽制して「禅譲」をチラつかせ、片や指導経験ゼロでの電撃就任を演出する周到な「密約」があった──。共通するのは「超大物OB」の登場なのである。
〈原監督V逸なら解任も〉
こんな衝撃的な見出しが躍ったのは、9月26日付のスポーツ紙。2年契約の最終年である巨人・原辰徳監督(57)に、この時点で正式な続投要請がないことが原因の一つだった。球団関係者が語る。
「この記事が出た背景には、球団から続投要請がないことに対し、実績ある監督として『まだヤル気がある』という原監督の心境がありました。それをおもんぱかってのものであり、球団に対する一種の『牽制』の意味もあったのです」
いわゆる「観測気球」を上げた形であり、
「球団がどう考えているのか知りたかった、という面も考慮されたようです。〈原監督が今季限りで解任される可能性が出てきた〉というあいまいな表現になっていることからも、それがうかがえます。と同時に〈後任候補にはOBの江川卓氏(60)らが挙がるとみられる〉と奇妙な論調なのも、球団が江川新監督誕生に向けて実際に動いているのではなく、万一退任する場合、原監督の意向として、バトンタッチできる唯一のビッグネームだからなのです」(スポーツ紙デスク)
第1次政権時代も含め、リーグ優勝7回、うち日本一3回という「名将」と呼ぶにふさわしい実績を誇る原監督に対し、CS出場を確定させながらも球団が最後まで続投か否かをハッキリさせなかった理由について、前出・スポーツ紙デスクは次のように説明する。
「原政権は延べ12年。長くやりすぎた弊害が出て、チーム内がマンネリ化している。選手の間でも『この監督のために優勝しよう』という気概が薄れているのは事実です」
さて、渦中の人となった江川氏といえば、11年11月に清武英利GM(当時)が緊急会見を開いて渡辺恒雄球団最高顧問(89)を痛烈に批判、告発すると同時に、次期コーチ人事の内幕を暴露した、いわゆる「清武の乱」でその名前が登場。岡崎郁ヘッドコーチ(当時)の留任など、首脳陣の陣容がすでに決定し、渡辺氏の了承も得ていたにもかかわらず、渡辺氏が一方的に「ヘッドコーチは江川氏とし、すでに交渉も始めている」と清武氏に通告したという一件である。「原監督、江川ヘッド」の黄金コンビ誕生への動きだったが、その際も、原監督みずからが江川氏を推薦したことを、渡辺氏が反論談話の中で明らかにしていた。原監督は今回、2人のタッグではなく、あとを託す適任者として江川氏がふさわしいと考えている、というのである。
原監督の「指名」という形で江川氏の存在が再び浮上したわけだが、一方で、読売グループの一員として巨人の人事に多大な影響力を持つ日本テレビの意向もあったのだという。