やる気が出ない。なんとなく気分が落ち込む。それなのに、食欲だけはある。こんな症状が10月から翌年の3月にかけて続き、春になると症状が回復する。病名は「季節性うつ病」。今、増えているというのだが、いったいどのように予防、対処すればいいのか。
うつ病は今や厚生労働省が5大疾病のひとつに挙げる精神疾患だが、やる気が出ない、気分が落ち込む、食欲がない、そして精神的に追い込まれてしまい、一睡もできない日が続く。こんな症状に悩む人は90年代終盤から急増。芸能界でも高島忠夫、木の実ナナ、渡辺正行、岡村隆史などが苦しんだ過去を告白している。
しかし「季節性うつ病」は、症状は一般的なうつ病と同じなのだが、睡眠時間は長くなり、食欲も旺盛で、炭水化物や甘いものが食べたくなるのが特徴だ。その原因は日照時間と関連がある。メンタルケアを中心に行うカウンセラーの小松さとみ氏が解説する。
「冬に日照時間が非常に少なくなる高緯度地域で発症率が高く、日本でも秋から冬にかけての日照時間が少ない季節に患者が増えています。これはメラトニンという、睡眠を促すホルモンが、光の弱い夜に多く作られることによります。つまり、日照時間が少なくなることで、メラトニンが過剰に分泌されてしまい、睡眠時間が増えるのです。また、セロトニンという神経伝達物質も日照時間が少なくなることで減少。このセロトニン不足も、うつの原因となります」
そのため、予防と治療は日に当たることだという。小松氏が続ける。
「予防や治療には、午前中に起床して太陽の光を浴びる規則正しい生活習慣が効果的。ウォーキングや通勤時間などを活用し、積極的に朝の光を浴びるとよいでしょう」
わかっているけど‥‥という方にはこんな手もある、とも。
「自宅や仕事場の照明を明るいものに取り替えるだけでも効果はあります」(前出・小松氏)
もちろん日照時間が短くなることで誰もがうつ病になるわけではないが、「このところ落ち込むことが多くなった」「体もだるいし疲れやすくなった」という症状が現れたら、まず日に当たることを心がけてみては。
(谷川渓)