うつ病は年々増えているのに、自分がうつに気づかない人はさらにその何倍もおり、みずからの不調に人知れず悩んでいるといわれる。しかしインスタグラムに投稿する写真で「うつ病」がわかるという。
米ハーバード大学のAndrew Reece氏と米バーモント大学教授のChristopher Danforth氏の研究チームは、SNSの「インスタグラム」に投稿される写真を、みずから開発した「うつ病」の徴候を検知するAI(人工知能)プログラムで解析すると、約7割の確率でうつ病を正確に診断できた、と最近「EPJ Data Science」オンライン版に発表した。
厚生労働省の発表によれば、この10年間で我が国のうつ病の患者数は約3倍、110万人超にも増えた。さらに、季節の変わり目に起こる「季節性感情障害」という症状もあることもわかり、これからの季節には「冬季うつ病」が起こりやすくなる。いずれにせよ、自分がうつに気づかない人はその何倍もいる。精神医学分野を研究している名古屋大学大学院医学系研究科の尾崎紀夫教授はこう語っている。
「女性なら5人に1人、男性なら10人に1人が、一生のうち一度はうつ病にかかる。うつ病は心の病、心の症状であると同時に脳の病気で、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの量が減少し、情報伝達がスムーズに行われていないことが原因だともいわれている」
今回発表された研究の成果は、みずからの不調をうつとは知らず、人知れず悩んでいる人たちに役立つだろうと期待が寄せられているのだという。ではその判別ポイントだ。うつの人が投稿する写真に表れる現象を要約すればこうだ。
1.色では青色と灰色が強く、全体に暗く、ぼんやりしている。
2.モノトーン加工を好んで使う。
3.顔のアップが少なく、引きの写真が多い。正面の写真が少なく、斜めや横からの写真が多い。
4.他人と一緒の写真が少なく、自撮り写真が多い。
5.投稿頻度は高め。コメントは多いが「いいね!」は少ない。
一口に言えば暗い写真ということか。
「うつ病の症状は、十分な休養と正しい治療により、うつ病患者の約80パーセントは、1年以内にほぼ発病前の状態に戻ることができる」(尾崎紀夫教授)
思い当たるフシのある方は早めに医者に相談するといい。
(谷川渓)