●ゲスト:藤田孝典(ふじた・たかのり) 1982年、茨城県生まれ。社会福祉士。NPO法人「ほっとプラス」代表理事。大学在学中より都内のホームレス支援活動に参加。04年、さいたま市内のホームレスを定期的に訪問する活動を独自に展開し、アパート探しや生活保護の申請支援を行う。06年、同市内に民家を借り上げ、地域生活サポートホームを複数開設、生活支援、自立支援などの総合的ソーシャルワークを実践。09年、反貧困ネットワーク埼玉代表に就任。現在は、厚生労働省社会保障審議会特別部会委員や聖学院大学客員准教授も務めている。著書に「ひとりも殺させない」(堀之内出版)、「下流老人 一億総老後崩壊社会」(朝日新聞出版)など。
ショッキングなタイトルが大きな反響を呼び、今年の流行語にもなった書籍「下流老人」の著者・藤田孝典氏。老後の貧困問題に鋭く迫った内容に、天才テリーも無関心ではいられない。ここはアサ芸世代を代表して、老後に気になるアレコレを真面目に相談してみると‥‥!?
テリー 著書の「下流老人」が大ヒットですね。
藤田 おかげさまで20万部を突破したみたいです。この手の社会派の本の中では異例の売れ行きだそうで、うれしいですね。
テリー タイトルの「下流老人」も、今年の新語・流行語大賞の候補50語にノミネートされたじゃないですか。これはインパクトのあるキーワードですよ。
藤田 ありがとうございます。
テリー 藤田さんは、ホームレスの人を支援するNPO法人の代表なんですよね。お若いのに、こういう問題に取り組んだきっかけは?
藤田 まず大学在学中にホームレスの支援活動に参加したんですね。そこで声をかけた方々の中に、元銀行員とか公務員とか、そうそうたるキャリアの持ち主がゴロゴロいるわけですよ。それにショックを受けまして、そこから一気にのめり込みまして。
テリー なるほど。
藤田 よく「奇特なことをするもんだね」と言われますけど、将来の自分のそういった不安を解消したいという気持ちも強いです。
テリー この本の「年収400万円でも将来生活保護になる」という内容にもビックリしたんですが。
藤田 現在のデータから、ある程度そういう予測ができるんですよ。
テリー というと?
藤田 現在のサラリーマンの平均年収はざっと400万。で、20歳から60歳までの40年間ずっと厚生年金に加入していたとすると、老後にもらえる年金の月額は、だいたい16万5000円ぐらいなんです。
テリー うんうん。
藤田 でも、この平均額は一部の高給取りのおかげでずいぶん上がってますから、実際の年収の中央値は300万ぐらい。そうなると年金額は月15万とか14万ぐらいまで下がりますし、ここまでくると生活保護レベルとあまり変わらなくなるんですよ。
テリー ええ、そうなの?
藤田 今、都内ですと生活費と住宅費を合わせた生活保護の支給額が、ざっと月13万ぐらいですからね。
テリー ありゃー。ということは、40年間、真面目に働いて年金を払い続けるより、生活保護を受けちゃったほうが楽ってこと?
藤田 生活保護を受けると税金や医療費、介護費なども全て免除されますから。年金でもらう15万より生活保護の13万のほうが、負担が少ないという意味では生活は楽でしょうね。
テリー でも、生活保護の金額もそんなに高いわけじゃないじゃないですか?
藤田 ええ、そのぐらい年金の支給額が低いということなんですよ。ですから、普通に働いて平均年収が400万としても、相当しっかり準備をしておかないと老後の暮らしが成り立たない。それが今の日本の社会保障制度の現実ですね。
テリー 厳しいなぁ!
藤田 でも、普通に暮らしているとなかなかそこに気づきませんから、この本で「下流老人」という言葉を入り口に、そんな現実を知ってもらいたかったんです。
テリー 年金が少ないと、老後は貯金を取り崩して生活していくことになりますよね。現在の高齢層の貯蓄高って、どうなんですか?
藤田 それも重大な問題で、貯蓄ゼロの高齢者世帯がすでに16%もあるんですよ。さらに、貯蓄500万以下となると4割に達する。ですから、日本の高齢者世帯の貧困率というのはけっこう高くて、先進諸国の中でも上位なんですよ。