人気絶頂の大相撲──。その頂点に立つ次期理事長に選ばれるのははたして誰なのか。春場所後に行われる役員選挙、そしてそれに続く理事長選に今、注目が集まっている。飛び交う裏工作、派閥の談合。角界は手段を選ばぬ伏魔殿と化しているのだ。
日本相撲協会は昨年12月18日、東京・両国国技館で理事会を開き、11月に亡くなった北の湖理事長の後任に、理事長職を代行していた協会NO2の八角事業部長(52)=元横綱・北勝海=を互選で選んだ。北の湖理事長の残りの任期だった3月の春場所後までの暫定措置だが、これに強硬に異を唱えた親方がいた。相撲協会関係者が語る。
「集まった理事の無記名投票で6対5と、わずか1票差。かろうじて八角親方を理事長代行から理事長に昇格させることが決まりました。反対票を投じたと見られるのは貴乃花親方(43)=元横綱・貴乃花=と伊勢ヶ浜親方(55)=元横綱・旭富士=などです。貴乃花親方は表向き、八角親方とは仲がいいので今回は譲るのではと見られていましたが、これだけは別なんでしょう。亡き北の湖親方は八角親方が後任の理事長を引き継ぐことを望み、遺言も残していました。それが現実となり、八角親方にしても、一度権力を握ると禅譲するなど考えられない。弱肉強食の世界なんです」
実は貴乃花親方には、北の湖理事長の懐刀と呼ばれた側近のK氏が接近していた。かつて手がけたパチンコビジネスに絡んで、業者から賄賂を受け取ったと報じられた人物であり、現在は相撲協会顧問の職にある。貴乃花親方は、一門の舵取り役をしていた音羽山親方=元大関・貴ノ浪=が急死して、K氏を頼りにするところがあったようだ。
「顧問の立場を利用して相撲協会を私物化しようとするK氏を、八角親方はよく思っていない。そんな事情を知るK氏は八角親方の当選を阻もうと、裏でいろいろ工作していましたが、12月18日の理事会にK氏の席はなかった。K氏の尽力で理事長に昇進するつもりだった貴乃花親方は、かなりショックだったようです。『相撲協会のうさんくさい部分はこの際、クリーンにしたい』──八角理事長はそう明言してK氏を切ったんです。貴乃花親方は理事会でも『どうして外部理事でもあるK氏の出席が認められないのか』と不満タラタラだったそうです」(前出・相撲協会関係者)
結局、互選の結果、貴乃花親方はこれまでどおりNO3のまま。NO2の事業部長に昇進したのは尾車親方(58)=元大関・琴風=だった。それかあらぬか、貴乃花親方の春場所後の理事長選に向けた意気込みは一段と激しくなったと言われるのだ。