では、九重親方と八角親方の勝負はどのようにして決するのか。
相撲協会関係者が解説する。
「あれはねぇ、九重親方の優勢が伝えられるけど、事業部長に抜擢された尾車親方が無風状態の二所ノ関一門からいくつ票を分けてやるか、それによって結果が決まるんですよ」
一方、大相撲改革の旗手であり、常にポーカーフェイスの貴乃花親方はこのところ、気色ばむことが多くなったという。
「以前は大声を出すなんてことはなかったのに、最近は時折、激しく怒りだすんですよ。何かにイラだっているようで‥‥。どうも噂では、株式投資に失敗したという話です。もちろん具体的な証拠があってのことではないんですが、億単位の負債がある、と話す関係者もいる。まぁ、貴乃花親方にはいろんなスポンサーがついているので、どうにか乗り切ることはできるかもしれませんが」(貴乃花親方をよく知る相撲関係者)
「バラ撒き」の九重親方とは対照的な「金欠」ぶり。とはいえ貴乃花親方の理事当選は間違いないところ。だが、理事長となると理事会で多数派を占めなければならず、八角理事長が(引き続き理事に)当選してしまえば、その切り崩しは難しくなる。
「貴乃花親方が理事長になる可能性としては、九重親方が八角理事長に勝った時でしょうね。貴乃花親方の改革路線に難色を示す親方衆も、九重親方が理事長になるくらいなら‥‥と考えているからです。そうした親方衆に担ぎ上げられる形で挑むのが理想だと、貴乃花親方も考えている」(ベテラン相撲記者)
これまで相撲協会の裏方の待遇改善など、貴乃花親方の実績はあるが、肝心の土俵改革がどのようなものになるかははっきりしていない。いわば、期待値だけが先行しているのである。相撲ジャーナリストの中澤潔氏が語る。
「世間の非常識が相撲界の常識、相撲界の非常識が世間の常識、などと言われましたが、今の相撲界で、世間で言う常識を最も持っている人が八角理事長だと思いますね。彼が執行部入りした際、アメリカのプロスポーツがどうやってお金を集めているか、ニューヨークで視察してきたんです。そういう行動力がある人は相撲界で初めてでしたね。現役時代の八角理事長は体は小さかったものの、稽古を重ねて横綱に昇進した人物。優勝回数は8回にすぎませんが、その1回1回に重みを感じる。貴乃花親方の大相撲改革にも引かれますが、それがどんなものになるか未知数です。大相撲のヘッドが数カ月でそうたびたび変わっては、世間の人は疑問を持つ。私は八角路線で続けるべきだと思いますよ」
「実弾攻撃」で票を買う親方、期待先行の元大横綱、そして黙々と努力する常識人。三者三様だが、がっぷり四つの裏工作を成就させるのははたして‥‥。