ここで次期理事長選までの流れを説明すると、初場所後の1月下旬に役員(理事)候補選を行い、3月の春場所後の評議員会を経て新体制を発足させ、理事による互選で次期理事長が決まることになっている。
さて、2年前、理事から屈辱の平親方に「降格」となり、リベンジに執念を燃やす親方がいる。それが九重親方(60)=元横綱・千代の富士=だ。昨年、膵臓ガンで入院したこともあり、テレビで顔を見るかぎりでは顔色がいいとは言えず、健康状態が心配されるが、あの「降格」の屈辱だけがよりどころ、バネとなっているようだ。
「ポチ(八角親方のニックネーム)ごときに理事長の座を持っていかれてはたまらない!」
と、谷川親方(38)=元関脇・北勝力=、陣幕親方(55)=元前頭・富士乃真=の2人を八角部屋から引き抜いたが、それにとどまらず、
「なんでも、『もしオレに投票してくれたら‥‥』と、“実弾”を派手にバラ撒いて親方を釣り上げているみたいですね。下馬評では、八角親方の再選は危ないかもしれない、とまで言われているほどなんです」(角界関係者)
しかし、九重親方のなりふりかまわぬ「禁じ手」の逆襲に、危機感を募らせた親方衆もいるという。
「近畿大OBの高砂親方(60)=元大関・朝潮=はこの春、近大から学生を入門させるのですが、3人のうち1人を八角部屋に分けてやった。つまり、八角さんに1票入れるということです」(相撲協会関係者)
もう1人が友綱親方(63)=元関脇・魁輝=。今回の選挙には立たず、理事を勇退するつもりだった。ところが、九重親方が優勢と聞いて翻意。
「友綱親方は『あいつが理事長になったら、協会がどうなるかわからない。オレは正義のために闘う』と宣言して臨戦態勢に入ったようです」(ベテラン相撲記者)
とまあ、この2人の親方以外にも九重親方嫌いの親方衆が後を絶たないのだが、なぜそんなに嫌われるのか。昨年11月の九州場所のあと、象徴的な「事件」が起こった。さる部屋関係者が明かす。
「白鵬の優勝回数35回は前人未到の記録として、ギネスブックに登録された。そのため、それを祝うパーティが博多で開かれました。各界の要人も呼ばれ、盛大に祝われたのですが、九重さんもその中にいました。司会者が参加者にひと言もらうコーナーを作り、九重さんにもマイクを向けたんです。九重さんも何かひと言言ってやればいいのに、あろうことか、『バカ野郎! 何でオレがしゃべらなくちゃいけないんだ』とやったもんだから、場は凍りついてしまった。九重さんの人間性を知っている人は『あ、またやったよ』と思うだけでしょうが、『なんて傲慢な!』『ケツの穴の小さい男だ』と思った人も少なくなかったようです」
「昭和の大横綱」はどっこい、小さな人物だというのである。