総理経験者を抱き込んだ大仕掛けの「口利き詐欺」もある。キッカケは、新進気鋭のサービス産業創業者に浮上した醜聞だった。
当時、その創業者はみずからの醜聞を巡って、複数の右翼団体などから執拗な攻撃を受けていたという。そして、度重なる攻撃を何とか鎮静化させるべく、以前からつきあいのあった政界フィクサーに相談を持ちかけたというのだ。創業者に仕えていた元経営幹部が明かす。
「その政界フィクサーは、かつて総理大臣の指南役を務めたことのある人物で、自民党の派閥の領袖クラスにも顔が利きました。最初は相談のたびに30万円や50万円ほどを手土産代わりに手渡していたんですが、そのうちフィクサーの要求がエスカレートしてきて、『元総理を動かすには子供ダマしのカネではダメだ』などと言い始めたんです」
結局、創業者は合計数千万円もの闇ガネをフィクサーに支払うことに。その一部はフィクサーを通じて元総理のもとにも届けられたそうだが、右翼団体による攻撃がやむことはなかったという。
「最終的には別の黒幕ルートを使って、騒動は落着しました。元総理とフィクサーにまんまとダマされた格好ですが、相談を重ねる中で創業者のスキャンダルを洗いざらいつかまれてしまっているため、泣き寝入りをするしかなかったんです」(前出・元経営幹部)
地元の支援者の父兄らをダマす「裏口入学詐欺」もポピュラーかつ健在だ。さるベテラン参院議員の現役私設秘書は、
「裏口入学詐欺は『私設秘書らの小遣い稼ぎ』と言われていますが、なかなかどうして、みずから詐欺を持ちかける議員センセイも少なくありません」
と前置きしたうえで、次のように打ち明ける。
「今や詐欺の舞台は大学から有名私学付属校などの小学校にまで及んでいます。その手口はまず、受験を控えた子弟を持つ支援者などを秘書らに探らせ、脈のありそうな父兄らを地元の事務所などに呼び出し、『あそこには顔が利くんだけどね』などと切り出すんです」
そして、話に乗ってきた父兄から400万円前後のカネを預かるのだが、口利きなど真っ赤なウソ。この私設秘書が続ける。
「結局、子弟は自力で受験することになります。それで落ちたら預かり金の大半、もしくは全額を返す。反対に受かった場合は口利きのおかげと称して預かり金の全額をいただく、というカラクリです」
中にはトラブルに発展するケースもあるが、父兄側にも後ろめたさがあるため、事件化することはまずないというのだ。
何とも驚きアキレるばかりの、荒稼ぎ手口の数々。甘利事件でも登場した議員会館や地元事務所は今も昔も、怪しげな話と札束が乱れ飛ぶ伏魔殿なのである。