他の弁当店との価格競争に敗れ、閉店に追い込まれた東北地方の元弁当店経営者は、「弁当業界は恐ろしいところだ」と言って、こう続ける。
「廃棄されたか廃棄寸前の食材がなければ、弁当なんか作れっこない。オカズを何種類も入れて300円以下で売れるのは、ゴミ食材を使っているからだ。豚カツ、チキンカツは出来合いの冷凍品がほとんど。どっちみち火を通すから賞味期限なんて気にしないし、1円でも安く手に入れば万歳だったね。俺が負けた弁当店は、東北南部の産廃業者からゴミ食材を直接仕入れていた。それでも俺は、こんな大胆なマネを続けることができなかった」
産廃処理業者「ダイコー」が横流ししたビーフカツ約1万3000枚が弁当に使われていたが、元経営者が言うとおり、弁当店は産廃抜きでは成り立たないのかもしれない。
ニシンのコブ巻きならぬタラのコブ巻きがある。消費者は国内製造と勘違いするらしいが、実際は中国からの冷凍輸入品。年末に解凍したものが店頭に並んだが、しかし売れ残ってしまった。すでに賞味期限が切れているが、これも「枠外記載」の仕組みによって日付が改ざんされ、関東、東北の一部地域で今なお販売されている。
先の元弁当店経営者が再び証言する。
「そのコブ巻きも廃棄すべきゴミ。それをまとめて800本近く買い取った弁当店がある。保管に困って、急いで中古の大型冷凍庫を買ったが、内部はまさにゴミ食品の山。それが利益を生み出すわけだから、ゴミ漁りをやめるわけにはいかないのさ」
1月下旬のこと。福島県会津若松市の食品業者「若松魚類」が、消費期限が5カ月オーバーのサンマすり身を学校給食調理場へ納品。それを食べた児童・生徒87人が「ヒスタミン」による食中毒を起こした。これは化学物質ゆえに加熱しても分解されないのだ。賞味期限の表示ラベルをはがしての納品だからタチが悪い。この冷凍すり身もれっきとしたゴミ食品である。
今回の「壱番屋」からの廃棄物横流し事件でもわかるように、産廃処理業者と食品業者は密接に繋がっている。そのため消費者は知らぬ間にゴミ食品を口に入れている。安価でも安心・安全な食べ物はあるが、あまりにも安価すぎるものには「裏がある」と知るべきである。